写真集 |
作者:
カオル
URL: http://www.ab.auone-net.jp/~kaka/
2011年11月12日(土) 12時23分19秒公開
ID:P4s2KG9zUIE
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【現職検事写真集、第二弾】 《ヒラヒラ検事の華麗なる日常》 ついに発売! あの超有名検事の職務として法廷に立つ姿や、謎に満ちたプライベイト。子供の頃の秘蔵写真。 その他、沢山のお宝ショット満載のファン垂涎の一冊。 監修は【メイちゃんのムチムチ大冒険】を手掛けた、アノ鬼才“天流斎マシス”氏。 インターネット及び、全国の書店にて好評発売中! 「やった〜、ついに買っちゃったッ!」 「何はしゃいでいるの? 真宵ちゃん」 外出先から一人戻ってきた少女は腕に何やら抱え込み、満足そうな微笑みを浮かべている。 「やっと、手に入れたよ“御剣検事”の写真集!」 「写真集!?」 「ナルホドくん、知らなかったの? 御剣検事の写真集が今日、発売になったんだよッ」 本日、ここに依頼人がいないのをいい事に、彼女は来客用のテーブルの上に、手に入れたばかりの本を並べるようにそこに置いた。 「真宵ちゃん、ボクには同じ本が三冊あるように見えるんだけど……」 「そうだよ、一冊は読む為。二冊目は保存用。三冊目はプレミアが付く事を予測して、インターネットオークションで売りに出す分!」 「嫌な買い方だなあ」 「何云ってんの、私の前に並んでいたサングラスを頭の上に乗せた白衣の女の子なんか、まとめて十冊購入していたんだから」 そんなに買ってどうするんだよ……そうは云いながらも、ボクは真宵ちゃんに本の中身を見せてもらった。 初めは、いつものスーツで法廷に立つ姿や、例の執務室でお茶を飲むアイツの姿が写っていたが、ページが進むにつれて、自宅らしき部屋で犬と共にソファーでくつろぐ姿(アイツ、犬飼っていたのか!)いかにも寝起き、と云った感じでベッドに腰掛け、足元には目ざまし時計が転がっている写真。そして、恐らくはこれがこの写真集の売りなのだろう、シャワーシーンが何枚か続いている。 「スゴ〜イ、これ後ろ姿だけど……お尻の割れ目近くまで写ってるよッ!」 まったく、どこを見ているんだか―――。 後からこの本をプロデュースしたヤツから聞いた話だと、出演交渉をするにあたって、今回の本の売り上げの一部を家庭の事情で進学が困難になった者を援助する団体に寄付する、と云う事で口説き落としたらしい。 さらに、ページを進めると、今度は“お宝秘蔵写真”と銘打ったページに行き着いた。 「うわ〜、何コレッ。かわいい〜♪」 そんな女の子独特の明るい声が響き渡る。見ると、幼い頃の写真。生後間もない頃から、学生服姿など、近年にいたるまでの様々なアイツの姿が写っていた。現在の眉間ヒビが入ったような厳しい表情とは違い、確かに幼い頃のアイツはボクから見てもとても愛らしく見える。 そして、次のページにあった一枚の写真を見た時、ボクは思わず先程の彼女に負けない位の声を上げた。 「あッ、これ……ボクだッ!」 そこには、小学校四年生の時のボクが写っている一枚があった。ボクの隣にはアイツがその隣には矢張の姿も見てとれる。 そうだ、これは御剣の家に矢張と遊びに行った時に写してもらったモノ。確か、この時シャッターを押してくれたのは、アイツのお父さん。お休みで家に居た所に突然、押しかけて行ったボク達を嫌な顔一つせず、こうして写真まで撮ってくれた。その時の彼の父親は息子の友達が遊びに来てくれた事をとても喜んでいる様子だった。 もしも、この時、将来の自分から話し掛けられたとしたら、ボクは、信じる事が出来るだろうか? 『君は将来、弁護士になる。そして、弁護士を目指している君の友人は、検事となるだろう』 だが、人生に “もしも” は存在しない。 嵐の前の静けさのような幸せな時間は、この写真の中だけにおさめられている―――。 「いいな……ボクもこの本、欲しいなあ」 感慨深げにそう呟くボクに、少女が目を見開く。 「えええぇぇーーーッ、ナルホドくん。御剣検事のシャワーシーンがそんなに見たいの?」 「違うよッ!この写真がいいんだよ!」 「ふーん、でも、残念だったね。もう、インターネット通販でも、どこの書店でも完売だって!」 そう聞かされはしたものの、未練たらしく自分が写っているページを何度も見直しているボクを見て、彼女は溜息をつきながらこう云ってきた。 「ナルホドくん。一冊、ゆずってあげようか?」 「ええッ、本当! ありがとう、真宵ちゃ―――」 「……5万円でね」 END |
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