―私のキモチ―
作者: 夜空   2008年08月10日(日) 11時48分53秒公開   ID:4NpAk/iDSdA



 私は知っています。 
 あなたは、私のことが好きではないんでしょう?

 私は知っています。
 あなたにとって、私は邪魔なのでしょう?


 それでも私は思っています。
 いつまでも、いつまでも、あなたのことを……。





 私は14年前。あなたの元へやってきました。 懐かしいですね。
 私の顔を見たあなたは、顔をくしゃくしゃにして笑っていましたね。
 私も笑ったのです。 分からなかったかもしれませんね。
 私の顔は、常に一緒に見えていますから。

 その次の日から、あなたは私の散歩に行く事になりましたね。
 早起きは苦手だったのでしょうか?あなたはいつもしかめっ面ではありませんでしたか?
 私が吠えると不機嫌そうに。でも、愛しそうに頭をなでてくれましたね。
 あなたのその優しい手が私は大好きでしたよ。ありがとうございます。

 桜が咲く季節。あなたはいつも黒い服を着て、家を緊張した調子で出て行来ましたね。
 そして、一気に身長が伸びませんでしたか?
 そして、私のことをうっとおしいと思い始めたんじゃないんですか?
 それでもそばに行くわたしを、兄弟やお父さん、お母さんに押し付けていましたね。
 とても寂しかったんですよ?気づいてほしかったんです。
 そばに行くわたしを、蹴ったこともありましたね。
 涙が出ました。なぜですか?あんなにかわいがってくれたのに……。
 もう、元には戻れないんですか?寂しいのです。気がついて下さい。

 ある日のことです。 あなたは泣きながら私に抱きついてきましたね。
 私は心配になりました。 だって、大好きなあなたが泣いているのです。
 私は一生懸命手を舐めました。 あなたは涙でグシャグシャの顔で微笑んで、私の頭をなでながら言ってくれましたね。
          「ありがとう」っと。
 私にはその意味が分かりません。でも、あなたがその日から、散歩を嫌がらずに行ってくれたのは分かります。
 毎朝6時。雨の日も風の日も、30分間の散歩に欠かさず行ってくれましたね。
 雨で濡れたり田んぼに落ちた時は、優しくお湯で体を洗って、笑って言いましたね。
          「大丈夫?」っと。

 ある日私の体に異変が起こりました。上手く動けなくなったのです。
 「ワン」と吠える事も出来ませんし、トイレに行く事も出来ません。
 それでもあなたは、毎日の散歩を欠かさずに行ってくれました。
 帰り道に抱っこしてくれたから、私は散歩の時間が大好きでした。
 私は体に異変が起こり始めてから、家の中でずっと寝ていました。
 あなたは、私の使っている毛布が寒そうだからと、新しい毛布を買ってくれましたね。
 新品の臭いがする毛布は、最初はなれなかったけど、今は宝物です。

 私はとうとう、散歩にも行けなくなってしまいました。
 あなたとあなたのお母さんとで、病院に行きましたね。
 鼻のきく私には、臭いが少しきついところでした。
 白い台に乗せられて、仰向けにさせられました。その後お腹に冷たい物を当てられました。
 あなたは、私の隣にいた白い服を着た人から何かを言われ、口を押さえて泣き出しましたね。
 あなたのその涙。私は今でもよく覚えていますよ。本当です。

 その日から、私の食事は変わりましたね。とっても柔らかいものに。
 あなたは私を見ると、いつも微笑んでくれましたがその目には涙が溜まっていましたね。
 私はあなたのその涙を、その悲しそうな手を一生懸命舐めました。
 あなたはとうとう本当に泣き出して、泣きながら私を抱きしめてくれましたね。

 私は一歩も動けなくなりました。今までは自由に走っていた家の中も、今では抱っこしてもらって動いています。
 水は、30分置きにあなたやあなたのお母さん達が、小さいころ私が使っていた哺乳瓶で飲ませてくれます。
 トイレにいけないし、散歩も出来ないので今は「オムツ」というものをしています。
 私にオシッコをした記憶はないのですが、オムツを取り替えるということはしてしまっているのでしょう。

 あなたはもう、朝「行ってきます」と言って、特別な洋服で出て行くことはなくなりました。
 あなたはいつでも私のそばにいて、頭をなでてくれましたね。
 時には出かけることもありましたが、ほとんど一緒にいてくれましたね。
 そして、私を抱っこして外に連れて行ってくれましたね。
 動けない私は、あなたの膝の上にいましたが、あなたは気にせず私に話しかけてくれましたね。
             「見て!花、凄い綺麗でしょ?」っと。

 その何日かあと、私の具合はもっと悪くなりました。
 涙や鼻水が凄く出て、食欲もなくて苦しいのです。
 あなたは私のそばに来て、必死に話しかけてくれましたね。

             「死なないで!」っと。

 私が苦しい中最後に見たもの。それはあなたの涙でした。
 私は願いました。 あなたが笑顔を取り戻してくれるようにと。




 私はあなたが嫌いです。

 散歩に行く時はしかめっ面だし、
 すぐに怒るし、
 私の尻尾を引っ張るし。

 私はあなたが嫌いです。

 すぐにぶつし、
 毛布は替えてくれないし、
 私のおもちゃをすぐ取るし。

 あなたも私が嫌いなんでしょう?


 それでも、私はあなたが大好きです。

 あなたも同じく私を好きでいてくれましたか?

 それでも、私はあなたを愛しています。

 あなたも同じく私を愛してくれましたか?




                    ―― 私は、心から……心からあなたを愛していました。 ――




 今となっては分からない事ですが、あなたの行動から、私は信じています。




                    ―― あなたは私を愛してくれていたんですよね。 ――







 そして、あなたは私の気持ちを理解してくれていましたか……?

 私は、全然出来ませんでした。

 ごめんなさい、そして、残念ですね……。





 


    そう、一日だけでいいから……、あなたと気持ちが通じ合ってみたかったです。




                                      あなたが私の。私があなたの。




                                       気持ちが理解できるよう……。











                                       ≪  私の気持ち  ≫

















                                      〜 END 〜
■作者からのメッセージ
……書いている途中で、泣きそうになりました。
本当に、今私が飼っている犬がこう思っていたら?
と思うと、切なくて……;
私は、あなたは、今飼っているペットに最後どう思われるんでしょうか?
この小説のように、最後「好きだ」と思ってほしいですね。
長くなりましたが、読んでくださってありがとうございました!
ご感想・アドバイスお待ちしています!

追伸 
 ちょっと変えました!

 元菜月です! 名前変えました。
また名前変えました。元空月です。

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