鉄板少年 |
作者:
のーエル
2008年03月08日(土) 21時35分39秒公開
ID:NCG5uTN0k2g
|
「出席番号15番 上原浄志(かみはら あらし)のことですが… 彼は入学したときから見えない何かに騒いでいるのです。ほら、そこにいるじゃないか! とか、追いかけてくんな!とか誰もいないところを見て叫ぶのですが…。鉄板のような物が見えると言っていたんです。彼の精神状態は正常、何も差し支えなく健康に暮らしています。いえ、小学校の頃、彼は五十日間高熱で寝ていたという話を聞きました。彼への対応はどうしましょう、私にはもう手に余ります。どう接したらいいのですか、学年主任。」 第一話「目覚め」 放課後、今日は真っ直ぐ家に帰ろう、何もすることないし。そう、今日はピンクダークの少年の単行本の発売日だった。途中で本屋によってくか。 上原 浄志は何気なく教室の戸を開けて廊下に出た。他の生徒は一緒に帰ろうと横に並ぶ物だが、浄志にはそんな友達はいない。二階の階段をせっせとおり、玄関で上履きを脱いだ。浄志は青ざめた。目には自分にしか見えない鉄板が映った。黒金色の直方体の形をした鉄板がずるずると身を引きずっていく。 上履きを下駄箱に押しやり靴を履いて校門を早足で抜けた。道路とすれすれの歩道を駆け抜け、二丁目のスーパーを通り過ぎ、途中の石段を見つけるととっさに一段抜かしで駆け上った。神社が目の前に見えた。息を切らしながら後ろを振り返ると鉄板の姿は見えなかった。ため息をつき、神社の入り口の階段に座り込んだ。毎回恐怖してきた物は何だろうと考え込んでいた。何故自分にしか見えないのか… ・・・・・ 「どうしたの?」 はっとした。自分の前にある影にまた影が重なっていた。後ろを振り返ると袴姿の少女が立っていた。自分よりも年上にみえた。 「ずっとうずくまっていたけど、あなた、ウチの学校の二年よね。」 誰ときこうと口を開こうとした。けれどその巫女は間髪入れようとはしなかった。 「もう日が暮れるから帰りなさい。」 はいと返事をして立ち上がった。階段を下りて医師の道を一歩踏もうとしたとき、 「自分の能力を受け入れるのよ、浄志君。」 思わず後ろを振り向いた。いま聞こえなかったが自分の名前を呼ばれたような気がしたから。確かに少女の声だった。少女は何事もなくばいばいと手を振った。 |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |