私の常識
作者: いちじく   2008年03月05日(水) 14時17分43秒公開   ID:7V0hqzIcwiM

 ――皆に“少食だ”と私は言われる。
 “ダイエットでもしてるの?”と馬鹿にされたこともある。
 私はそんなつもり、全然無いのに。
 友達に相談したら、“だってあんた親友のあたしらからみても大丈夫なの、ってくらい食べてじゃない。
時々本当に心配になるわよ、あんたの食生活”
 そう言われたので、さすがに心配になった。
 学校の昼食の時間、皆を見る。
 確かにみんな、私の倍以上、ううんそれ以上食べているかもしれない。
 ――違う。
 私はやっと気づいた。理解した。

 私が皆の半分以下しか食べていないのだ。
 
 “拒食症”
 それこそが、私の抱えている非常識的な異常。
 
 どうして今まで、こんな簡単なことに気づけなかったんだろう?
 以上を正常と認識して、自分の中の勝手な常識に捕らわれて。
 周囲にまったく目を向けていなかったのだ、私は。
 大体、この体にしたってそうだ。
 周囲の皆は個人差こそあれど血色のいい、ふっくらとした女の子らしい体系をしている。
 なのに私はどうだ。
 手足はまるで棒のよう。肉付きも悪くて、これじゃあまるでミイラじゃないか。
 あぁ。
 私は急に自分という存在が恥ずかしく思えた。
 と同時に、こんな異質な私の友達になってくれたクラスメイトを誇らしく思った。
 感謝の気持ちで、胸がいっぱいになった。

 ――変わろう。
 狂った常識を取り払って、普通になろう。
 春休み前、私はそう固く誓った。
 自分のために。
 そして何より、友達のために。

「おはよう!」
 一人の少女が、教室のドアを開けるなり元気よくそう言った。
「×××? あんた、どうしたの? 見違えたじゃない!」
 彼女の風貌の変わりようを見て、クラスメイトは思わずそういった。
 少女はうれしそうに笑んで、
「ありがとう。この間やっと、体重が100キロ台にまでいったの!」

 平均体重100キロ以上のクラスの中で
 少女はもう、一人目立つことなど無かった。


 “少数の意見は多数に飲まれる”
 “世の常識も、また”

 
■作者からのメッセージ
思いついたまま書いてしまいました。
こういった系列(?)の話の試作品のようなものです。

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