ワンちゃんは犬神さま?!第一章 後編 | |
作者:
イナエ ノマ
2007年08月08日(水) 13時57分04秒公開
ID:ibVw7PwPH9M
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……翌日 「おはよ〜!!」 学校に行く途中に葵ちゃんの姿を見つけて声を掛けた。 「あっ、紗亜乃!!もう復活?」 葵ちゃんがこっちに走ってくる……でも、あれ?隣に麗莱ちゃんの姿がない。 「麗莱ちゃんは?お休み?」 「うん、紗亜乃が帰った後に麗莱まで早退しちゃってさー。いやー帰り道が寂しかったよ」 なんだ……麗莱ちゃんも早退しちゃったのか。 ……あ、昨日のこと、忘れてた。 あの後へんしーんって叫んだ5匹がどうなったかというと……そのまんま、変身したよ。それも人の姿に。 銀雷は栗色の髪をした若い男の人の姿に(結構イケメンだった) 姫呼はふわふわで長い銀色の髪をした綺麗なお姉さんに。 龍癒はなんかやったら眠たそうな目をした、やったら背の高いお兄さんに。 七緒は眼鏡をかけた何か真面目そーな男の人に。 そしてそして、水劉ちゃんはかわゆーい小さな男の子になった。(といっても女の子みたいだったけど) それでよく分からないまま5匹(5人?)『法陣』とかいうもののやりかたをたたき込まれた。 銀雷には「学校とやらが終わったら、その栞という妖狐を連れてこい」って言われたんだけど………これで栞ちゃんが妖怪じゃなかったらどうやって説明すればいいんだか、って私はすっごく不安だ。 「栞ちゃん、おはよう」 学校についてすぐ私は栞ちゃんに声を掛けた。 「紗亜乃ぉ!大丈夫?昨日急に早退しちゃったから、びっくりしたんだよ。」 栞ちゃんがいかにも心配してます、みたいな口調でそう言う。やっぱり、昨日、銀雷たちのあんな話を聞いたせいか、物凄くわざとらしく聞こえた。 「心配してくれてありがと。でももう大丈夫、完全復活したから!……でさぁ、今日暇かなぁ?」 ちょっぴり疑いつつも、私は笑顔で続けた。 「うん、全然OKだよ。」 栞ちゃんは笑顔で頷く。 「そう。じゃあ私の家に来ない?あ、家って言っても神社だけど」 私がそう言った瞬間、明らかに栞ちゃんの表情が変わった。 ………何て言ったらいいのかな?笑った、でもないし、吃驚したでも無いんだけど。 とにかく、普通とは違う表情になった。 「う、ううん。いいよいいよ、行く行く!」 栞ちゃんはこくこくと頷いて言う。やっぱり変だな、と思いつつ私は「じゃあ、家で待ってるね」と言って栞ちゃんから離れた。 栞ちゃんが教室から出ていくのを見て、私はふう、とため息をついた、やっぱり不自然な感じがする。 でも、栞ちゃんが妖怪かどうかって話は今日家に帰って見れば分かることだし……… 言われた通りにしたからね、銀雷!! そしてそして時刻はとび、放課後 「ただいま〜………おお!」 嫌〜な6時間の授業を終えて帰ってきた私を出迎えたのは、何か『おんみょうじ』とかいうので出てきそうな服を着た5人の若い男女だった。 「随分と様になってるね、5人とも」 「ん、これか?お前のもあるぞ。」 私の………?と私は一瞬期待した、が、銀雷がニヤニヤしながら言った所を見ると………やっぱり何だか怪しい。 「姫呼、見せてやれ」 「じゃ〜ん、これよ〜!!可愛いでしょ?」 ひらりと私の前に差し出されたその服を見て、私は言葉を失った。どうしてかっていうと……… 「………あのさ、それって、もしかして、もしかするとメイド服だったりする?」 「え?今はそう呼ばれてるの?これは天界ですごーい人気の儀式服なのよ〜」 私はまた黙り込んだ。 だって、いや、そういわれてもさ。てか、いくら何でも妖怪に「いらっしゃいませ、ご主人様!」なんて言わないじゃん!! 「それ着て狐を退治しろと?」 私がそう尋ねると5人はそろって笑顔で頷いた。 「……このまんまでいいわ。鞄置いてくる」 ふうとため息をついて私は自分の部屋へと向かった。後ろから、え〜何で?可愛いじゃない。という姫呼の声が聞こえてくる。 ……姫呼。あなたの美的センスが全く理解出来ないんだけど。 「で、だ」 「うわっ、びっくりした!!」 いきなり目の前に銀雷が現れた………てか、どっから先回りしたの? 「もしかすると、あの妖狐はここにある南寒石を狙っているのかもしれない」 銀雷は別に気にした様子もなく、自分の話を続ける。これだったらどっから先回りしたのって聞いても無駄だな、と直感的に思った。 「え、この神社にあるの?」 私が銀雷の話に対して尋ねると、玄関の方にいた水劉ちゃんがふよふよと飛んできてそれに答えた。 「うん、あの倉の碁盤の中に、南寒石があるんだよ。これが解かれると他の妖怪たちも次々に動き出すだしちゃうんだ」 倉の碁盤、と聞いて私は割ってしまったあの石版のことを思い出した。そういえばあの碁盤につまずいて足に青あざつくっちゃったんだよな。 「じゃあ、あの何で置いてあるかわからない碁盤は南寒石を隠していたってこと?」 「そうだ。妖狐といっても昨日現れたのは子供だ。油断させるために親の妖狐が放ったとするなら話は別だが、今の所その気配はない。子供の妖狐に人を石にするほどの力はないし、狙ってくるとすれば碁盤の中の南寒石と考えるのが妥当だろう。 昨日ここへやって来たのは恐らく下見だろうな」 私は銀雷の話に一回一回頷きながら話を聞いていた。 とはいっても殆どが意味不明だったんだけど。 「いいか、妖狐が来たらうまく誘導して6人で陣を組む。で、後は昨日言った通りにすればいい」 ああ、昨日のね。と私はまたため息をつく。何て言ったって間違えるたびに銀雷の蹴りが飛んできて大変だったんだから。 これだけ出来れば大丈夫だ、だなんて言われたけど、本当にあれが成功するのかな??? そんなことを思っていたその時。 「う、うわーっ!!」 倉の方から叫び声が聞こえてきた………お父さんだ。 「来た……!」 姫呼が静かに呟くと、銀雷がぐっと握った拳を真上に上げた。 「行くぞ!!」 銀雷が吠えるように叫ぶと残りの4人は口々に返事を返し、みんな猛ダッシュで倉の方へと向かい始める。 「え、ちょ、速……」 ワンテンポ遅れて私も5人に続く。 でも、それにしても速い速い、みんな風のように走っていく。自慢じゃないけど、学校でも1,2を争うくらい足の速い私でも全然追いつけない。 私よりもちっちゃい水劉ちゃんでさえ私の3,4m前を走っている。 (何でみんなこんなに速いの・・・?) 全力疾走で走ったため、倉にはすぐついたけど準備運動もなしに走ったのでかなり息が上がっている。 「お父さんは家の中に入ってて」 私は倉の前で腰を抜かしているお父さんに言った。 お父さんはあ、ああと掠れ声で頷くと大急ぎで家に引き返して行く。 その時、すぐ前……倉の中でパリーンという何かが割れる音がした。 「ね、ねえ、今のって……」 私がそう言いかけると水劉ちゃんがしーっと唇に人差し指をあてて言った。 一番前にいた龍癒がそー…っと、扉を開けると、 「遅かったのね」 倉の中から、皮肉を込めた笑みを浮かべた栞ちゃんが私達の方へ顔を向けた。その足下には割れた薄青の欠片が転がっている。 栞ちゃんの目は昼間のような黒目がちな可愛らしいものではなかった。 ……兎のように赤く、狐のように鋭い。。 「忌まわしい南寒石は割ってやったわ。これでみんなも復活できる」 「やはり子供の妖狐だったか。子妖よ、大人しく天界へ帰り、神への忠誠を誓うなら手荒な真似はしない。お前はまだ子供だ。罪を償うことはまだ出来るはずだ。」 いやよ、と栞ちゃんは言い放った。 「封印が解けてすぐに動くことが出来たのはあたしだけだった。あんたたちとの戦いの所為で、みんな動くことが出来なかったのよ。 この地球は人間なんて生き物が暮らす世界じゃない。妖怪こそがこの世界を支配するべきなのよ。誰にも邪魔なんてさせないんだから!!!」 乱暴に、吐き捨てるようにそう叫ぶと栞ちゃんは姿を変えた。 栞ちゃんが放った禍々しい黒い霧の中に紛れるようにして、闇色の狐が降臨する。 「これが石妖狐……」 「石になった人間を食べて、あんな姿になったと言われているわ」 真面目な顔をして姫呼が言った。栞ちゃんを警戒してか、水劉ちゃん以外はみんな武器を持っている。 「その気がないのなら力ずくでも送りかえさなければならない」 珍しく真面目な七緒のその言葉に応えることなく、妖狐が走り出す。が、その行動を読んでいたかのように5人も妖狐を追って走り出した。またまた私も慌てて追いかけるが、妖狐は5人よりも遙かに速かった。 到底追いつけない、と思ったその時、妖狐がとてつもないスピードにのって5m近くも高く飛び上がった。 「逃げるつもりッ!?」 「まかせて!!」 姫呼の声に水劉ちゃんが答える。 「松の木さん、力を貸して………」 水劉ちゃんが両手を上げると植えられていた松の木が枝の伸ばし、妖狐を打った。 バランスを失った妖狐が地面に落ちる。 「そ−簡単に逃げられると逃げられるなんて思わないでよ」 後から追いついてきた私に、水劉ちゃんがにこっと笑いかけてくる。 ………水劉ちゃんのエスパー能力が木々を動かしたんだ、とその時気がついた。 「犬神………ごときに………!」 妖狐は必死に逃げようとしているが、思いっきり地面にたたきつけられた衝撃で怪我をしたのか、ただもがいているだけだった。 「法陣を組め!!」 銀雷の言葉で私を含めた後の5人が妖狐の周りに集まる。 「罪深き妖よ」 姫呼が落ち着いた口調で杖を前に突き出した。 「大いなる神の庇護のもと」 続いて七緒が数珠を手に嵌め、胸の前で合わせた。 「母なる天へと戻れ」 次に珍しく欠伸なしで龍癒が言葉を繋ぎ、つながった札のようなものを広げる。 「神への忠誠を誓うと共に」 何やらたどたどしい口調で、水劉ちゃんが喋る。 「永遠の安らぎを与えよう」 銀雷は剣を地面に突き刺して言い放った。彼の言葉にしてはかなり重みがあった。 「天界の道。今、開くとき」 最後に私が空に向かって叫ぶと中央の妖狐、栞ちゃんに光が差した。暫く私を睨んでいたがやがて姿が薄くなっていき、最後にはふっと姿を消した。 栞ちゃんが存在したその場所には、白い狐の形をした紙が落ちているだけだった。 その紙を姫呼が拾う。 「行ったか………」 銀雷が安堵のため息をつくのと同時にぱんぱん、と手を叩く音が聞こえた。 「沙亜乃ちゃんすごいわ〜」 「れ、麗莱ちゃん?なんでここに?学校休んだじゃない」 私の疑問に麗莱ちゃんは笑って答える。 「うん、そうなんだけど。なんか体調が散々で、お払いでもしてもらおうかと思ってきたんだけど……… そしたら何だか紗亜乃ちゃんたちが妖怪退治みたいなことをしていたってわけ」 「『みたいなこと』って言うか………そういえばSPさんたちは?」 説明しよう。この西園寺 麗莱ちゃんの家はこの辺一番のお金持ちで、この子はかなりのお嬢様なのだ。 「置いてきた。部屋で寝てるってことにして秘密で抜け出してきたから」 「何でまた」 私が驚いた声を上げるも、麗來ちゃんはいつもと同じ微笑みを浮かべて続ける。 「ん〜、実は紗亜乃ちゃんにどうしても話したいことがあったから。お払いはそのついでかな」 「はあ」 話したいことがあるからって家を抜け出すこの人は一体……… 「じゃ、取りあえず家に入る?」 「・・・ちょっと待て、俺たちを忘れるな」 銀雷が家に向かおうとした私たちを止めた。 「ぼくたちを忘れるなんてさ−ちゃんひどいよ」 水劉ちゃん、そんな目でそんなこと言われたらこっちの方が傷つくよ。 「別に誰も忘れてないッ!!」 私が叫ぶと、麗來ちゃんが一歩私の前に出る。 「あのね、良かったらその方たちも一緒にお話ししたいんだけど、良いかな?」 銀雷たちは顔を見合わせると、代表なのか何なのかよく分かんないけど、銀雷が一人良いぞ、と答えた。 麗莱ちゃんの話は驚くようなことばかりだった。 麗莱ちゃんは、銀雷たちが人の姿をしているにも関わらず五犬神だと見破ったり、私が司祭の末裔であることを知っていたり、さらには栞ちゃんが妖怪だということを知っていたり……… ………いつもにこにこしてるのに一体普段何考えてんだろ? 「何でそんなに知ってるの?」 「ん〜、ちっちゃい頃からおとぎ話のように聞かされてたから」 麗莱ちゃんはさらりと言った。 「それにね。私の家は紗亜乃ちゃんと同じ数百年続いてる名家らしくて、妖を封じる戦に加勢していたの。 ご先祖様は笛で妖を惑わし、封じていったとか………だから仕来りとして西園寺家の者はフルートを習うんだけど」 麗莱ちゃんがフルートやってるのって妖怪が復活した時に戦えるようにってことだったの?!って違う違う、予言されてたんじゃないんだしそんなの昔の人が知ってる分けないよね……… ⇒To Be Continued... |
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