RUNE SHADOW 第四話
作者: ラスレイ   2007年07月25日(水) 20時56分58秒公開   ID:.ePzohpbKOU
 赤い髪の青年が剣を円状に描くと、ズック、ブローリー、ヴィンの3人が何かに当たったように吹き飛び、壁にめり込む。
「ぐぁぁ…。」
 3人がうめき声を上げて地に落ちると、その場に人だかりがあっという間に出来、宿屋 砂漠亭 の奥からタンカを持ってきて3人を運び入れた。
 その様子をラルド、ブレイド、ルナの3人は呆然と見つめていた。
 赤い髪の青年に呼吸の乱れ1つ無い。
「…久しぶりだな…、ブレイド。」
「…、アレン将軍…。」
 明らかに、ブレイドが年上に見えたが、ブレイドの態度は堅苦しい。
「今回は…敵としてでしか無いのですか…? ルーインの第3幹部としてでしか…? 将軍。」
「そうだ…ブレイド現将軍…。ルーインの全幹部の資料を持っている貴殿なら、私と戦う事も想像がついただろう?」
「…元・帝都の絶対な信頼を得たマスターロウ…アレン・グレーバー…?」
「君は、6年前、世間を騒がせた大怪盗・ラルドだね? 5年前の戦で姿を消したと聞いていたが…?」
 アレンはブレイドからラルドへと、方向を変えた。
 そして、剣を一振りして、続けた。
「死んでいなかったか…。」
「俺は5年前程度の戦で死ぬタマじゃない…!」
「5年前…?」
 ルナが2人に聞くが、答えは無い。
「面白い…。ブレイド、貴殿との戦いは後だ、先にこの盗賊を殺す…。」
 それだけ言うと、アレンの足元の影が、一気に広がった。
 そして、その影はアレンとラルドだけを飲み込んだ。
 その後、影は一瞬で消え去った。

「何処だ? ココ…?」
 ラルドが飛ばされた先は真っ暗だけれど、辺りの見える…むしろ、壁が黒い、何もない空間といった方が良いような場所だった。
 目の前にアレンもいる。
「ここはシャドウホール内だ…どちらかがくたばるまで、ここからは出られない…。」
「面白い…。」
 ラルドが低く構え、背中の大剣を抜き、一瞬の動作で剣を二刀流にして、アレンに斬りかかる。
 アレンも剣を一撃目を防ぎ、二撃目は剣の衝突を利用して飛び退く。
 そして、ズック達を吹き飛ばしたように、剣で円を描く。
 その後、風の靡く音と共に、ラルドが剣を振る。
「騎士魔法…ソニックブーム、俺には見えてる…!」
「ほほう…予想以上だ。」
「今度はこっちだ!」
 ラルドも同じ様に円を描く…が、少し、違う。
 勾玉の様な形だった。
「!!」
 重い金属音と共にアレンは剣を振る。
 更に思い音が鳴り響く。
「騎士魔法…アイアンソニック…、貴様…?」
「ハン!」
「私も本気を出そうか…。」
 青年は左腕を突き出す。
 手の甲には不思議な紋章があった。
「! お前…ラグル!?」
「そうだ…。」
 見る見る内に、紋章が広がって、左手を隠す。
 そして、それは鋭い爪へと形を変える。
 左手は手首まで黒く、手の甲に紋章が妖しい紅色で浮かんでいる。
「そう…、私はラグルの【黒爪(くろづめ)】の一族だ。」
「そうか…、だとしたら、お前の歳は相当だな?」
 ラルドが短剣を構えて聞く。
「そうだ…丁度、340の年月を生きている。」
「そうか……。」
 ラルドが呟くと、ラルドの背中が蒼白く光り始め、それが何かを象り始めている。
「…? 盗賊…ラルド…貴殿もラグル…?」
 やがてラルドの背中に白く、美しく、大きな翼が生えた。
「…。」
 ラルドは翼が出るまで、蹲っていたが、翼が完全に出ると、一瞬で両手を左右に開き、背筋を伸ばす。
 すると、翼から抜けた白色の羽根が飛び散る。
「…絶滅したと思っていたが…ラグルの【白翼(はくよく)】一族か…? よく見れば、貴殿もラグルの名残があるな…。」
「ご名答…。」
 ラルドは低く構えると、短剣を逆手に、翼を一度、羽ばたかせる。
 すると、恐るべき速度でアレンを切りつけた。
「くっ…、中々…しかし…!」
 切られた左手は黒く光り、やがて傷と血を消し去った。
「黒爪は5種のラグルで最も治癒能力に優れている!」
「自信満々は止せよ!」
 ラルドが再び、急接近し、幾度も敵を切りつける。
 しかし、回復の方が少し速かった。
 ラルドは一旦、退いた。
「ちっ…。」
 ラグルの種類は白翼を含め、治癒に優れる黒爪、速さに優れる白翼、攻撃に優れる獅子(しし)、防御に優れる亀骨(こうこつ)、最後に、体を全て獣とし、全能力を極限まで高め、攻撃、速さに優れる黒竜。
 この5種である。
 ラグルと人の見分け方はただ1つ、手の甲にある限りなく薄い紋章である。

「大丈夫か…ラルド…。」
 空間の外では、ブレイドが剣の刀身を地面に突き刺して、じっと黒い空間を見つめていた。
「ブレイド…? 多分だけど…、あの子、ラグルよ…?」
 ルナが突然、ブレイドに言い出す。
「ラグル…? ハハハ、冗談だろ? 力を発揮する前のラグルは大して強くない。アレン将軍は生を受けた時より、人の2倍も3倍も努力して、紋章を濃くする技術を身につけた。力を完全に発揮しなくても、並大抵の者には劣らないが、それでも、3分の1程度、手の甲の紋章を濃くする事であの強さだ。それに、ラルドは常に手袋をしているから、紋章も見えないじゃないか?」
「それは…絶滅した【白翼】だから…。」
 ルナが物静かに言うと、ブレイドが目を見開く。
「人とラグルには魔力の違いが、ほんの少し…、恐らく、人やラグルには感じ取れないくらいの違いがあるの…。月の一族は元々、魔力の察知に特化しているから、見分けられるの…。お願い! 信じて!」
 ルナは胸の前であわせて、目をギュッと瞑る。
「あ…ああ。」
「有難う…。じゃぁ、白翼について説明するわね?」
 ルナは早速、切り出した。
 ブレイドは頭が少々、混乱している様子だった。」
「白翼は他と違って、力を発揮しても、速度が増すだけ、他は何も、変化しない…。つまり、白翼は力を発揮すると、人に脅威の速度を加えたようなものなの。」
「つまり…、力も、体力も、力を発揮しても、変わらず、速度にみが変わると言う事か…?」
 ブレイドは何とか頭で聞いた事を纏めて、口にした様子だった。」
「ええ、そうよ。」

「ハハハ…! 白翼の唯一の弱点は力を出しても、速度以外、何も変わらないという事だ! 私の黒爪…いや、他のラグル全てが力を出すことで、動体視力も上がる…。貴様の速度にも、ついてゆける程にな!」
 ラルドは既にボロボロだった。
 相手の斬撃は幾度か体に傷を与え、その度に血を流してゆく。
 もう、限界な感じであった。
「…。」
 しかし、ラルドは目を瞑り、両手を拳1つ分の感覚を開けて胸の前に出す。
「…? とうとう、諦めたか? これで…終わりだ!」
 アレンの剣がラルドの肩を切り裂く直前に、アランは大きく後方に飛んだ…、いや、飛ばされた。
 それと同時に、空間が崩壊を始めた。
 ラルドは空間が壊れた反動により、少し、吹っ飛ばされた。
 アレンは何とかたち留まる。
 空間が壊れ、外に出たラルドとアレンをブレイドとルナが見つめた。
「ラルド!」
 ブレイドの低い声と、ルナの高い喜びの声が重なって聞こえた。
「さぁ…、ここからが本番だ!」
 ラルドはよろめきながら立ち上がり、口元の血をふき取って不適に笑う。
「ここからは俺達も参戦だ!」
 ブレイドとルナがラルドの元に走り寄る。
「ハッ! 元々、貴様ら2人を始末する為に、ルーインの幹部を2人、呼んでおいた…。そろそろだな…。」
 そうアレンが言うと、何処からか地面に結界が2つ現れ、魔導師の様な服を纏った青年と、ディバウレンの酒場で会った、ルビィティが居た。
「…! ウルオス!?」
 ルナは魔導師の青年を見て、唐突に声を上げた。
「あれは…、ルーインの第4幹部だが…。面識があるのか? ルナ。」
「幼馴染です…。」
 ルナは物静かに言う。
「幼馴染!?」
 ラルドが声を上げる。
「おぃ! 話は済んだか!?」
 ルビィティが叫ぶ。
「こっからは、1対1のタイマンとしようぜ!」
 すると、3人の足元からはシャドウホールが広がり、ウルオスはルナ、ルビィティはブレイド、そして、アレンは再びラルドをシャドウホール内に取り込んだ……。
 
■作者からのメッセージ
今回も戦闘メインです!
次回予告を…
 
ルーイン対ラルド一行 その戦いで明かされる次々の真実…。

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