神様 |
作者:
ヒリマ=モナ
2007年07月13日(金) 16時36分06秒公開
ID:w8Rp/QZVAh.
|
神様、どうしたらいいですか―― 信じていいでしょうか―― 神様 あたしは、世間で言ういじられキャラらしい。 例えば、手を振っても嫌そうな顔をして手を振らないとか、優しくかまってもらえないとか。でも、それは全部本気で嫌われているわけではないから、あたしは平気だった。 けれど、その考えはだんだん、薄くなってきた。 よく解からなくなる。もしかしたら本当に嫌われているのかもしれない。相手にとっては、ほんのからかいにすぎない。でも、悲しくなってきた。気を引きたくて、とか、笑ってもらいたいとか、とにかくいろんなことをした。たまに、笑ってくれるときがあったが、大半は変な顔で呆れられた。あたしは笑ってくれる顔が好きだった。そのときだけ安らかになれる。 どうしたら優しくしてくれるか考えて、その結果泣いてみることにした。必死で泣こうとした。机に顔をうずめてじっとしていた。普段なら入ってこんとってぇ、などと言われながら無理矢理『和』の中に入っていったりしていたが、止めた。いつもと違うあたしに気付いて、誰か声をかけてくれるのを待った。やっと目が濡れてきた。楽しそうに話しているのを聞きながら静かに待っていた。 「嘘泣きだから、ほっとき」 心臓が一瞬、縮み上がった。 一気に喉が熱くなって、あっさりと目から涙が滲みでてきた。イスを引いて立ち上がって、誰もいない外に飛び出した。足を止めて、静かに、泣いた。 悲しかった。悲しかったから、神様に八つ当たりした。 誰も、あたしに優しくしてくれない。 誰も、優しく手を引いてくれない。 みんな、ひどい。 神様のせいだ。 全部、すべて、なにもかも。 嫌いだ。 もう、やめて。 あたしがいなくなったら―― そこまで思って涙を拭いた。 あたしがいなくなったら あなたは…亜世は悲しんでくれるだろうか。涙を流してくれるだろうか。 もし、そうならあたしは静かにまぶたを閉じよう。神様を信じてみよう。 雨が降る。 あたしの身体を濡らしていく。 「ばいばい」 一度振り向いて、ゆっくり歩きだした。 水溜りの弾ける音が聞こえるだけで、あたしの足音は雨に流された。 神様 どうすればいいですか―― 暫く歩いて立ち止まった。そのまま、壁に寄りかかって座りこんだ。髪の先から水が落ちる。このまま沈んでいくような気がする。地に足がついていることすら解からなくて、景色が霞んでいく。落ちる。どこか、別の空間に、落ちていく。今頃、亜世どうしているだろう。悲しんでくれているだろうか。涙を流してくれているだろうか。 ふと、足音が聞こえる。 宙をかける足音だ。 誰……? 「優子…!」 名前を呼ばれた。この声は亜世だ…。あたしを探しに来てくれたんだ。 でも、霞んでいく。景色が見えなくなる。声が聞こえなくなる。 落ちていく。どこかへ。消える。 ――きえる? 神様 神様 どうか このまま消さないで下さい。 どうか―― 目に光が入ってきた。先刻とは違い、鮮やかな原色が記憶されていく。 視界に入ってきたのは紛れもなく亜世だった。 「はぁ…何してたんよぉ〜」 「………」 帰るよ、と言って差し伸べられた手に、 「うん」 手を重ねた。 「もし…あたしがいなくなったら亜世はどうする。」 「あほでしょ。なにいってんの。」 そっか、と言って苦笑いをした。そのあと、探しに行ってあげるよ、と聞こえた気がする。なにしろ、雨の中を歩いていたため風邪をひいたらしい。そのため、全身の機能が虚ろになっているのだ。また景色が霞んできたが、今度は静かに、目を閉じた。 神様 神様、 あたしはこれからあなたを信じてみようと思います。 どうか静かにお守り下さい。 どうか―― fin |
|
■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集 |