雨神 〜1〜
作者: 消しゴム   2007年06月29日(金) 20時46分59秒公開   ID:AEfTpL95rG2
「あ〜、退屈だよねぇ……。健斗もそう思うでしょ?」

「…ん、まぁ学校楽しいなんて奴そんなには居ないよな」

何気ない会話。放課中夜更かし気味でぼんやりとした僕の頭で考えれる最大限の答え。
と言うよりかはぼんやりの理由はこの大雨による憂鬱な気持ちからきていた。
しかしどんな返答でも彼女にとっては関係ないであろう。言葉より返答が欲しいだけなのだから。

「全く……少しくらい休みがないと…。ホントに」

「光はホントに忙しいからなぁ」

光の母さんと父さんは一年前離婚した。
苗字は『篠原』から『岡本』に変わった。いや、戻った。
前の名前で呼べば必ず離婚のことを思いだしてしまう、彼女のことを光と呼ぶ子は多かった。
それは皆の気遣いでもある。
彼女が忙しいと言うのは離婚のほかにも色々と事情がある。
彼女は卓球部に所属し、朝練、学校、部活に塾と一日中かなりのハードスケジュール。
一年にして部のレギュラー、土日も試合なので満足に休める日は無かった……らしい。
こんなに親しく女の子の事が分かるのも幼馴染、という理由で全て片付いた。
何かと騒ぐ男子には幼馴染と言えばだいたい茶化すのを止めた。
この学校に深く人の話を聞こうって奴はあまり居ないのだ。

「…あ〜あ!学校休みに何ないかねぇ……」

僕はどうやったら休みになるか、少し考えてみた。
まだ動きの鈍い頭を懸命に動かした。

「…傷害事件とか、殺人事件がこの学校で起これば、休みになるんじゃない?」

「あ、いいねぇ!始めは傷害事件、そしてやがて殺人事件に発展する、
 多くの被害者が出て、学校中で騒がれ一時的に学校は休みとなる、みたいな」

僕達はこの時言ったことはほんの冗談のつもりだった。
本当によく、雨が降る日だった。



       1、<雨神様>

僕は学校を終えるとすぐに家に直帰する、帰宅部って言うのは楽だ。
中三という大事な時期であっても、やはり学校が事件などで休みになると言うのはある意味僕らの憧れだった。
憧れっといっても単に野次馬になってそこら中に噂を広めるのが好きなだけだが。

「……ただいまー。」

「ただいまー」とは言っても両親は居ない、当たり前だが返事も無い。
僕の家は一軒家でそこそこな広さなのだが父と母は対外仕事で、広い部屋はいっそう広く感じられる。
外ではまだ憂鬱な雨が降り注いでいる。
今日一日のことを振り返る確かに学校は退屈だ、
ただ先生の話をボヤァッと聞いてるだけで、一体なんの得になると言うのだろう。
僕は一人リビングで憂鬱な雨を見ていた。家は暗くじめじめした感覚を覚えた。

僕はため息をつき「明日…休みになんないかなぁ……」と呟いていた。

暫くは休み休みと呪文のように唱えながらぼうっとしていたのだが、それにも飽きてきた。
退屈しのぎに僕は図書館へ行くことにした。



す、涼しい!図書館は僕の家とは違い梅雨入り前のじめじめした感じを追っ払うような、
表現はしにくいが、そんな清清しい空気が辺り一面を覆っていた。
僕はココの童話の本が大好きだった。
中三にもなって童話なんて子供っぽいとよく言われていたが別に恥ずかしくも無い。
人間好きだと思うことにずーっと打ち込めることは幸せだ、と僕は思う。
僕は小一時間、読んでない童話の本を読み進めていた。

「…ふぅ、おもしろかった」

僕は本を戻そうとした時ふと右の棚にある変わった本を見つけた。

「なんだろう?」

古ぼけた本でジャンルは昔話、題名には『雨神』と書かれている。
こめかみの親戚だろうか?……いやさすがにそれは無いな。
興味に満ち溢れその本を握った。その本を開き僕は少しずつ読み始めた。


 昔々にある一人の若者がおった。若者は近々結婚の予定があった。
  若者も女もその村一番と言われるほどの美男美女であった。
 村にはしきたりがあり新しく結婚する男女は嘆きの洞穴と言う洞窟を越え、
  その奥の雨神(あまがみ)さまへお祈りをなさねばなるぬというしきたり。
 一生この村を離れず、二人で生きていき、雨神様を崇拝し、
  祈りをささげ続ける、それがしきたりだったと言うのに男は
 それに背き「私達だけが幸せになれますよう…」と祈った。

 雨神様は元々祟り神。幸せには出来ない。
  雨神は男女の願いに困り果てついには村に大雨を降らせた。
 濁流により村は水底に沈んでいった。
  しかしその男女二人に被害は無かった。
 そして雨神は言った、「汝らは被害にあわず、幸せを手にした」と。
  男は自らの過ちに気づき嘆きの洞穴へ入っていた。
 そして願った、どうか、村に平和を。我が命を投げ出してでも……。

 村に平和は訪れない。雨神様は祟り神。
  男を見たのはそれっきり。村に残ったのは女のみ。
 その日に雨はもう降ってはいなかった。


と、ここまでだ。本をさらにめくるとなにやらが記載されていた。

 汝願い叶えたくば祈れ、汝が我に崇拝し、
  我が汝の願いを叶える。それが汝の願い。
   汝が我を必要とする、汝が我の力となる。
    我が汝の望みを叶える。それが我の欲望。
     祈れ、「雨神様助けてください」と、
      数回祈れ、さすれば叶う、汝の欲望。

な、なんだコレ?訳分からない。最後の数回祈れって、ちゃんと数記入しないとダメじゃん。
結局の所雨神なんてものは居ない、と言う結果に僕は行き着いた。
時計を見ればもう六時過ぎ、そろそろ帰らなくては、見たいテレビもあるしなぁ。
僕は憂鬱な雨の中傘をさしながら家へ帰っていった。
■作者からのメッセージ
ど、どうも。消しゴムです。最近全くお話書いてないせいか、
とんでもなくおかしな内容になってしまいました……。
まぁ、おかしいのは元々かもしれないけど(かも、ではない)
ぇ〜っと流れとしては二話くらいに健斗くんの紹介を入れたいな、と思ってます。
これからも気力の続く限り頑張って書きます。
そしてここまで読んでくれた人!せっかくだからコメントをください(お願いします

別に修正したからといっても特に内容は変わってませんよ?(聞くな

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