Real World-1st Album-
作者: 世界の住民   2007年05月13日(日) 22時54分30秒公開   ID:zq0.ZFLG29I
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1、ご案内

 
 人間にはどうしても無理なことがある。

 例えば、男性が女子更衣室には入れない。女性だって男子更衣室には入れない。
 
 そして、自分が抱く妄想を、この世界に広めることはできない。


 目の前で永遠と演説するおっさんは変なやつだった。
 薄汚れたスーツに、シルクハット、手にはステッキ、しかも蝶ネクタイと、手品師のようだ。しかし、ひげは生えまくっていて、とてもそういう職業についているとは思えない。

 こいつは変人以上でも以下でもない。
 真夜中に突然ぼろい台を持ってきてそこに立ち、駅前の路地で演説を始めたのだ。もちろん、みんなチラ見して通りすぎていった。
 
 
 だが、なぜか俺はこいつの話に興味を持ってしまった。
 俺は台の近くに座り込み、話を聞いていた。

 ただの落ちこぼれ……学校にもいかず、こうして真夜中の街をぶらつくだけの奴になっていた俺には、変なじいさんの話は何故か惹きつけられるものがあった。
 

 俺がこいつの話を聞き始めてから30分、突然俺に話しかけてきた。
「ほう、君は私の話に興味があるのかね?」
 俺は少し黙ったあと、一言「ああ」とつぶやいた。
 変人(これからはじいさんをこう呼ぶ)はニヤリと笑う。
「そうかね、じゃあ、座りたまえ。少し話をしよう」


 ……ということで、俺は台に座り、変人と隣合わせに座った。
「……何で俺と話するんだ? あんた?」
「真夜中をぶらつく不良に用はないんじゃないかって?」
 おいおい、どうやら俺の身分、ばれちまってたみたいだな。まあ、どうでもいいことだが。
「まあ、いいだろう。君、これから話をするから、よく聞きたまえよ」 
 


2、それは決して超えられない壁(Album Mix)


「ああ……何故君を好きになってしまったのだろう……」
 男は目の前にいる女性を見てそうつぶやいた。
「君を好きになってはいけない、愛してはいけないというのに……」
 目の前にいる女性……いや、目の前にあると言ったほうが適切であろう。
 なぜなら、この女性は生き物ではない。機械だからだ。
 
今はもう、西暦3029年。ロボット学が進歩し、人型のロボットまで作れるようになっていた。しかも、人間そっくりの動作ができるものを。
 便利なロボットはいろいろなところに使われた、だがしかし、問題も起こってしまったのだ。
 その問題こそ、人間がロボットを機械として見れなくなってしまうことだ。
特に異性のロボットには、恋愛感情すら芽生えてしまう人間もいる。それが
ここで頭を抱える男である。
 彼の名は、一応Aとさせてもらおう。Aは、3年前に女性の、自分と同年代
型を購入した。とても美しいロボットだった。
 彼には、恋愛の経験もなく、生身の女性と付き合ったことはない。
なぜかって? それはこの男は対人恐怖症だったからだ。
小学校のころ、ひどいいじめに合い、それ以来、人間と普通の接せなくなっただから、Aがロボットに熱中したのは言うまでもないだろう…… 
 そのロボットの名は、「由美」といった。

 さて、A氏はだんだんとロボットの特別な感情を抱き始めたのだ。
「おはよう、由美。」
「オハヨウゴザイマス。」
 ロボットは事前に与えられたことしか話すことも、行動に移すこともできない。しかし、Aにはどうしてもそうは思えなかった。
「今日はどこか行くかい?」
 この質問にロボットが答えられるだろうか? もちろん、それはない。
自分で考えることができないのだから……
「ソノシツモンノコタエは、データニアリマセン」
 ロボットは淡々と答える。Aはそれを聞いて肩を落とす。
「そっか……しょうがないね。じゃあ……」
 続きを言おうとした瞬間のことであった。
バタ!
 突然、ロボットが、Aのもとに倒れこんできたのだ。
 なぜそうなったか? 多分電池切れのたぐいだろう。しかし、Aは勘違いを
してしまうのだった。
(なんだ……俺に抱きついてきたのか)
 確かに、勘違いするのは無理のないことだったかもしれないだろう。
ロボットは、自分のマスターをなるべく傷つけないために処置をとるように
されているのだ。
 だから、傷つけないために、手をAの体に巻きつけ、体を守ろうとした。
だが、どう考えてもこれは「抱きついた」というべきだろう。
 Aはこのときから、自分の本当の気持ちを知ってしまったのである。
 そう「自分は由美(ロボット)を愛してる」と。

 それから、A氏はロボットにプロポーズをした。このときのやり取りは
非常に滑稽であり、哀れである。
 男は、ロボットを裏庭に呼び出し、花束を渡した。
「君がすきなんだ。」
「ソレハワタシノデーターニハナイコトバデス」
 無論だが、ロボットは対応できないだろう。
「いいかい? 君が好きというのは君が大切な存在だということさ」 
 すると、ロボットは首をかしげた。
「ワタシハコレマデハアナタニトッテタイセツデハナカッタノデスカ?」
 Aはあわてて首を振った。
「いやまさか! これまでだって君は大事な存在だよ!」
 ロボットは、いろいろなデーターを計算し始めた。そして、ひとつの結論を
出した。
「ワカリマシタ。ワタシハアナタヲ……愛します。」
 何故、愛してますの部分だけ漢字にしたか? それはご想像にお任せしよう
 この後、男はロボットを抱きしめた。ただ、そこからぬくもりは感じられなかった……だが、男はきっとぬくもりを感じたはずだ……

 それからが悲劇の始まりだった。
 最初はロボットとしてではなく、一人の女性として接していた彼だが、
もちろん、相手はロボットである。だから、だんだん男は嫌気がさすようにな
る。不倫、ばくちを、Aは繰り返した……

 だが、ロボットは何も文句を言わない。いうようにプログラムされてないからだ。
だが、男が遅い時間に、体中に口紅をつけて帰ってくると、ロボットは
「オカエリナサイ」
と言う。しかし、どうも悲しそうな顔をするのだ。
 最初にそれに気づいたのはもちろん男であった。
「おい! そんな目で俺を見るな!」
 ある日の帰り、やはり遅い帰宅であった。
 いつものようにロボットは「オカエリナサイ」と言ったのだが……
 やはりどこか悲しそうにAを見つめていたのだった。
悲しげに、哀れむように、男を見ていたのだ。それは気のせいでもなんでも
ないのだろう……
 男はたまらず、ロボットをたたきまくった。ひたすらに、ただ殴った。
「なんなんだよ! このくそロボットが!」
 Aは普段からこういう男ではない。ただ、酒が入ってしまうと……
男がロボットいくら殴っても、ロボットは表情ひとつ変えない。
 だけど……
 なぜだろう……
 ロボットが、由美が悲しそうな目をするのは……

 男は毎晩、ロボットを殴り続けた。
あるときは棒、あるときは素手である。しかし、抵抗することはない。
 だが、当然だろうが殴り続けては、ロボットが持たないのだ。
だんだんロボットの回路がショートを始めるのだった……

「アナタハダレデスカ?」
由美は記憶回路が故障し、記憶を全て失ってしまった。
しかし、男はそんなことは気にしなかった。
「え? 僕かい? 僕はAです。よろしく」
 キッチンで料理を作っている妻が笑う。
 そう、Aにはもう人間の家庭が出来ていた。
「お父さん、ただいま!」
 泥だらけになった男の子が帰ってきた。
「お! サッカーか! いいぞ!」
 Aも父になっていたのだ。
 要するに何がいいたいか? 答えはひとつだ。もうAにとってロボットは
もう不必要な存在になっていたのだ。
 だが、ロボットは何も言わない。ただ、命令に従うのみだ。
今は、A家のお手伝いロボットになってしまっていた……

 そして、ある日のこと
 一家で買い物に出かけた。ロボットも一緒だ。
 この日は雨が降っていて、視界も悪かったのである。
 その途中の出来事であった。 
「わーい! お父さん! 捕まえてみなよ!」
 新品の長靴をはいた息子が、交差点を走り回っていた。
今は青信号である。だから大丈夫だったのだが……
 信号が点滅をし始めた。
「危ないわよ!」
 妻が息子の手を引き、向こう側の道路に引き込んだ。
しかし、A氏だけはそうもいかなかった。水で転んでしまったのだ。
「いてて……」
 A氏が起き上がろうとしたときだった。
 
 車が走り出したのだ。

「うあああ! 来るな!」
 男は懸命に叫んだ。そして……
ドン!
 車は正面衝突した。しかし、それはA氏ではなかった。
 それは……ロボットであった。
 A氏の足元に、スクラップのロボットがあった。
「うう……お前……」
 A氏があっけに取られたように、ロボットを見つめた。
「愛……し……て……る」
 今、確かにロボットは言ったのだ。「愛してる」と。
あくまでもロボットだが、もしかしたら本当に愛してたのかも……
 


 A氏はようやく、あの悲しい目の理由がわかったようだ。



3、impartiality(New Mix)


3−1 ある男の場合1〜劣等生は何を見る〜

 その男は何もかも最悪だった。そう、何もかも。
 何の才能もない、頭も良くないし、これといって特技もない。体力も力もない、容姿もださい、太ってて、ボサボサの髪、くさい体臭、上げればきりがないのであった。
 しかし、そんな男も恋をするものである。彼はまだ高校生だ。当然だろう。
 が、神様は残酷だ。その女子は男子に人気がある。しかも、幼馴染の気が合う男友達がいる、というアニメのような設定だったわけだ。その男友達と彼の名前は皮肉なことに同じである――
 ここまではよろしいだろうか? では、お話に入るとする。


「……どうして、俺はこんななんだろう……」
 彼はつぶやいた。一応、「世界一ダサい」主人公ということで名前は明かさないようにしようではないか。
 彼はただただ、下を見ながら歩く。友達もいない。そんな悲しき男なわけである。いわゆる、劣等生だ。

「……そんなわけでさ……あはは……」
 向こうから声がする。彼が上を向くと、そこには二人の男女が楽しそうに話しながら歩いているのがわかった。

「うう……花子さん……」
 彼はつぶやく。そう、その彼が愛した女性こそ、花子さんなわけだ。無論だが、「花子」などという名前ではない。あくまでも筆者が独断で変えたわけであり、別に某お笑い芸人とか、トイレの妖怪とかではない。関係ない。

「え〜、そうなの? また模試で1位だったの?」 
「まあね。今回はすっごく勉強したんだ」

 そしてその隣にいる男子、太郎君が、花子さんとの同級生で、優等生だ。すごくかっこよくて、女子から人気である。そんな二人はどこからどうみてもお似合いであった!
「何なんだよ、この違いはよ」
 彼はまたつぶやいた。そして、また下を見つめて歩き出した……

 恋人のような二人の後をつけること、5分、まだ彼らの道は同じらしい。

 やがて、一軒の大きな家が見えてきた。いやはや、その大きさときたら、主人公の家のまあ、5倍はあると思われる。お屋敷だった。

「じゃあ、今日は何作ってくれるんだい? 花子ちゃん?」
 え?
「う〜ん、ないしょ!」
 え?
「そんな、あ、待ってくれよ〜」
 そして二人は共に屋敷へ……
 お〜い、どうなってんすか! 何なんですか!

 彼は心の中で叫んだ……

 

 その夜、彼は机で一人で考え込んでいた。何故だ? 何故こうなるんだ?
どうして俺はこんな容姿なんだろう? どうして俺は不潔なんだろう?
 ――どうして俺は彼とこんなにも差があるのだろう?――

 彼は泣いた。それは悔し泣きだった。自分が惨めだった。恋に敗れた涙なのか、こんな世界に対する、不条理感に対する涙なのか? それはわからない。
でも、彼は泣いていた……ただ、泣くばかり。机がびしょびしょになった。置いてあった点数の低いテストも、薄汚れた教科書も、涙でにじむ。

 ――あの女、いや、あの男がいなくなればいい訳だよな?――
 こんな時、恒例の”悪魔の声”出ました!
「でも、どうすればいいんだよ?」
 おいおい、普通「そんなことできない!」だろう? まあ、今の彼の状態では無理もないだろう。
 ――簡単だ。あいつを怪我させればいい、あいつの家の前、朝は車がよく通るだってなあ――
 え〜、どうなってもしらないぞ。おい、お前はどうなんだ? 主人公?

「だめだよ、そんなことは」
 偉い! よく言った! そりゃああんまりにもひどい話だもんな。
 ――じゃあ、お前、どうするんだ?――
 確かに、どうするんだ? 主人公君?


「……彼女と、話しがしたいんだ」
 ――は?――
 は?(悪魔と同意)
「……そして、今までの僕の思いを伝えるんだ!」
 とは言っても、あまりにも突然すぎるのが気になるところだが、その辺はどうなんだろうか?
 ――いや、何度か話したことがあるらしいぜ。席も隣なんだって――

⇒To Be Continued...

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