雨の日の記憶
作者: 消しゴム   2007年07月24日(火) 18時20分29秒公開   ID:AEfTpL95rG2
……ここって、どこだろ?

真っ白な布団とベッドに僕は挟まれていた。
何してるんだろう…って、あれ?

       僕って誰?
      ここってどこ?
     今まで何してたの? 

暫く一人で呆けていたが、その内「起きよう」という思いが芽生えた。
何故思ったかは自分でも分からないが、
「寝てるのに飽きたから」と適当にごまかせばいいだろう。誰にだろう?

「…うっ!」

起き上がろうとした時頭がゆれ、同時に頭痛に似たような症状がでた。
右手で頭を抱えどうにか上半身を動かした。
どこか見たような景色、けど分からない。
起き上がってから頭の痛みが酷くなっている気がした。
分からないがこれ以上酷くなったらいけないと悟った。
息を荒くしながらも、視線を右に泳がせた。
真っ白なカーテン、真っ白な部屋、真っ白な机。
しかし、机の上にはペーパーナイフがある。
まるでその白い机に馴染んでいない、異物のような感じだ。

……どこかで使ったような気がする。

「なんだ、起きてたんですか。」

僕は彼を横目で見た、頭が酷く痛み、目だけで見たので残念ながら顔までは見られなかった。
唯一見えたのは白衣。

「症状はどうですか?」

ああ、こいつはきっと医者だ。こいつの言うことを聞けばこの痛みはきっと治る。

「聞いてます?    さん。」

考えてたせいでつい答えるのが一瞬遅れてしまった。
いやそれより聞き取れない。何故か名前のところだけ聞こえない。

「   さん、今日もこの薬飲んでくださいね。
 ちゃんと飲めばこの後遺症もどうにかなりますよ。」

やはり聞き取れない。それは僕の名前を呼んでいるのだろうが、分からない。
後遺症…。そうか、なんかの事故に巻き込まれたのか。
この頭痛は後遺症なんだ。

「…あの、僕ってどうかなってしまったんですか?」

「ああ、心配要らない。脳に障害が少しありますが何とかなりますよ。
 …ただ大事な問題ですからね。」

彼は部屋をでた。それから一分も経たずに一人の女性を連れてきた。
二人で何かをごそっと話して女性がこちらを見た。

「    さん、今からあなたの記憶、見させてもらいますね。」

やはり彼女の言葉も聞き取れない。彼女は僕の目を見て、笑った。

「そんなに力まなくてもいいのよ。」

彼女の目は僕の胸のうちまで知り尽くしそうな、そんな見透かすような目だった。
一瞬彼女のやったことが分からなかった。
ただ急に目蓋が重くなり、すっと暗闇に落ちていった。

真っ暗な闇、不安を抱いた。
体が浮いているような心地だ。僕は周りを見たがどこにも闇が広がるだけ。
まっ白な、フワフワしたシャボン玉のようなものがこちらに来た。
一つ奥から来るとまるで追いかけるようにまた一つ、また一つとシャボン玉がきた。
いくつもののシャボン玉の中にはそれぞれ世界が広がっていた。どこにでも僕は居た。

シャボン玉が二つ三つ通り過ぎた頃に四つ目が来た。少し覗いてみるとやはり僕が居た。
小学生の頃の入学式だ。僕ともう一人女の子が居た。どこかで見たことがある。
……嫌な感じがした。できればもう、忘れたい、何故かそう思った。現に覚えてないのに。
僕はそのシャボン玉から離れるとそのシャボン玉はパチンと音をたて無くなってしまった。
あの嫌な感じ…。なんでだろう?そして何故アレだけ割れてしまったのだろう?



僕はいい加減シャボン玉を見るのに飽きてしまった、というのもすでに何十時間と時が過ぎたから。
飽きる、と言うよりかは疲れたといったほうがいいかもしれない。僕はシャボン玉の川を出た。
どれも僕の昔の記憶ばかりで懐かしかった。が、もう来る記憶全てがただの日常になっていた。
シャボン玉の川は少しずつ勢いが弱まっていった、そして最後には黒いシャボン玉が残った。

そのシャボン玉は様子が明らかにおかしかった。黒く淀んでいる。
僕はすぐに駆け寄ってその世界を見た。


「…はぁ…はぁ…。」

荒々しい呼吸をしている僕を見た、雨の中傘もささずに走っている。
…手にはペーパーナイフ。

「絶対に、絶対に金作ってやるから…。待っててくれ、   。」

あ、そうだ。僕には病気の妹が居たんだっけ、でも名前だけは聞こえない。
確かこの日、妹の手術の日だ。お金がどうしても足りなくて…。

僕は自分が路地裏に走っていくのをみとどけた。

「頼む!金を貸してくれ!」

「もう無理よ!いったいいくら貸してると思ってるの!?」

どこかで見た女性に金を求めていた。無論女性は嫌がったが

「頼む!妹の一大事なんだ!頼む、もう当てが無いんだ!少しでいい!分けてくれ!」

と食い下がってきた。見たところ女性とは面識があるようだった。
だからきっと声を掛けてのだろう。

!?あれ?この人って…彩夏さん?
彩夏さんとは小学中学と同じ学校に通い続けた同級生だ。
そうか、僕はお金を借りようとしているのか。妹のために。

ようやく状況が飲み込めた。

「い、嫌ですよ!他をあたっ…!」

そこで女性は声を止めた。

「…金を……出せ。時間がないんだ。」

僕の手にはあのペーパーナイフが握られていた。いつ人を殺すか分かったもんじゃない。
そのくらい僕の精神は揺らいでいた。しかしいくら事情があっても金を出せと恐喝して言いわけがない。

  ―――だめだ!やめろ!―――

僕の叫びは僕自身に届かなかった。彼女はパニックになり思わず逃げ出した。
僕は彼女のハンドバッグを掴み、引き寄せた。
急に引っ張られたので、彼女は倒れてしまった。
引き寄せたバッグを彼女は易々と放してはくれなかった。
僕は彼女を殴ったが放さなかった。高ぶった感情はもう誰にも止められなかった。

刺した、ペーパーナイフで。彼女の胸のあたりだろうか。
溢れていく紅い、それは紅い深紅のしずく、やがてそれは水溜り程度の大きさになる。
しとしとと降り注ぐ雨の中、場違いなくらい真っ赤な液体……血だ。
一目でそれが死んでいることが分かった。

彼女はダランと腕を下ろした。そのまま僕はハンドバックを乱暴に取り上げ財布から現金を取り出すのを見た。
僕はハンドバックと財布を投げ捨て、そのまま走っていった。

殺人犯。

僕はそう悟った。僕の行く先は病院だ。この道は間違いない。
歩道を走っていった。不運にも青信号にも関わらず軽自動車が突っ込んできた。
居眠り運転だった。僕は数メートル吹っ飛ばされた。そのまま僕は病院に運ばれた。

……ナイフを握り締めたまま。


       そうか。僕は…僕は…
          
        人を殺したのか…。
■作者からのメッセージ
ぇ〜と、新設道場になって初の投稿。
これは以前の小説を改善(悪?)した物…って!
改善してなおこの駄文っぷり!なにさ、ええ!?なんか悲しくなってくる!!(勝手になっとけ)

なんか改善点とか…教えてください!
★☆★☆★
う〜〜ん。どこ変えたか分からんくらい微妙だ…。

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