火の車男・その1
作者: 麒麟   2007年04月01日(日) 21時33分25秒公開   ID:ZAzpzdA3cwY
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 皆さんは世にも奇妙すぎて馬鹿げた話をご存じだろうか?
 馬鹿げた・・いや、滑稽とでも言うべきだろうか?
 今から話を語ろうとしている自分にも訳が分かっていないのが現状である。
 ただ1つ、言えることがあるとすればこの話ほど“不条理”という言葉が合う物語はない。
 不条理かつ摩訶不思議で哀れで馬鹿なあっけない物語。
 それがこの、「火の車男」である。
 語り手である自分がこれだけある意味、鳥肌になる話だ。
 皆さん、心して読んでもらいたい。なお、苦情は一切受け付けない。
 最初からこうして不条理な話だと宣言するほどであるからゆえ、それは察していただきたい。




 ボロボロで今にも崩れそうな木造2階建て風呂なしアパートからその男は出てきた。
 彼は名もない男である。
 職業は何であろうか?一応フリーターか・・いや、無職かもしれない。 
 彼は小太りでメガネをしている。年齢は25歳らしい。
 タマを飼っていたが死んでしまったために埋めている。
 がしかし、ここで言えることはそのタマが猫だとは本人が断言していないことである。いや、タマという名の犬の可能性もある。しかしそれが確かだという証拠もない。
 とりあえず飼っていたが死んで埋めたというタマの正体・・探ろうとすると時間がかかりそうなうえ、このただでさえ脱線しかけているこの話をさらに脱線させそうなので今回はあえて無視で。
 さらに彼は以前、少年院に入所していた・・あー、また話が脱線しそうである。少年院にいた理由・・暇があれば語ろう。
 とりあえずタマといい少年院といい、語りだすといつまでも話が進まないので勘弁していただきたい。

 さて、男はとてもウキウキしている。
 理由は単純だ。合コンに誘われたのだ。彼の数少ない友人が彼を合コンに誘う。うーん・・よほど人数合わせに困っていたのだろう。しかし、ある意味その友人も血迷ったものである。彼を呼ぶくらいなら人数が足りないほうがよほどマシだと断言ができるであろう。
 それでまぁ、メガネで小太り25歳で無職の可能性大の男は、合コン前日の夜からウキウキして合コンに必要なものを準備していた。というか、合コンに必要なものとは何だ?服か?
 
 とまぁ、話はここで大きく脱線する。
 この男、見かけによらず家計簿なるものをつけている。見た目は何の変哲もないA4サイズのノートであるが、そこの表紙に彼らしい汚らしい字で家計簿と書かれている。
 1人暮らしゆえに重要なのだろう。金の管理をしっかりとしているとはこれまた感心な若者である。ただ難点を言えば、無職である可能性大のこの男が家計簿に記入するほどのまず金があるのか?といったところだ。
 正直今回の合コンだって、行ったらきっとまずは満足に食えていないであろう飯を食うことに集中することうけあいだ。哀れすぎる。
 で、何故ここで家計簿が登場するのか?そろそろ理由をお話ししよう。つまり、彼は家計簿に几帳面にも金の支出入を記帳していることが唯一、他人にできる自慢なのだ。
 あー、これを聞いてうそだろ・・と思った読者諸君。おそらくその嘘が現実として今起ころうとしている。
 彼は必死に考えた末、合コンで家計簿をつけていることを自慢しようと考えたのである。そしてそれで女の子にもてようと考えているのだ。
 正直そんなことで女の子にもてるようであるなら誰だって苦労しないだろう。作者である自分自身も今日から積極的に何だったら家計簿をつけてやっても構わない。それでもてるならな!!

 こほん・・申し訳ない。少々取り乱してしまった。
 さて、本題に戻ろう。
 彼はそこで家計簿のことを合コンで女の子に自慢しようと考えた。
 そして今、彼は合コン会場で飯を必死に食っている。哀れだ。もっと女の子に集中しろ!!
 とまぁ、急いで飯を口の中に詰め込んだためか、哀れな25歳無職らしい小太りメガネでタマを埋め少年院入所経験のある男はむせはじめた。
 隣の男友達から水をもらい一気に奥へと飯を流し込むその姿は哀れなことこのうえない。というか、この話を語ると哀れが口癖になりそうである。
 と、男がふと顔をあげると目の前に可愛らしい女の子がこちらをジッと見つめていることに気づいた男。一瞬ドキッ・・とする。かなり古い例をあげると松田聖子のビビッとハートに電撃が走った。というビビッと婚とよばれるやつだろう。
 馬鹿!お前の哀れな姿にそこらへんの養豚場で飯に顔突っ込んでまで必死になって食っている豚を見るような眼で見ているだけだ!その事実に早く気付け!

 だが、空しくもこの男が自分がいわゆるキモイと呼ばれるカテゴリに分類されたことを気づくこともなく、その女の子にアピールを始めた。
 女の子は可愛いのだが男は言うまでもなく・・哀れと仕方がないので言っておこう。
 男は嫌がって避けていることに気づくわけもなく女の子の横に座る。うむ・・美女と野獣か?しかし、野獣にしては格好がよすぎる。美女と豚か?紅の豚の主人公であるポルコ・ロッソが「飛ばねぇ豚はただの豚だ」という、かの有名なセリフを残している理由がここでよく分かる気がする。
 確かに飛べない豚はただの豚だ。彼を見るとそう思えてくる。さしずめ豚にされて飯をがっついている千と千尋の神隠しの冒頭で出てくる千尋の両親のような豚に近い。
 いやはや、ジブリ作品が嫌いな人には悪い表現をしたと思う。反省。

 さて、ここでその男が嫌われているにも関わらず気付かずに、必死にしつこくアピールをされている女の子を紹介しよう。
 運悪く彼の席の正面に座ったのが運のつき・・名前をクミちゃんという。
 クミちゃんはとても可愛く男どもにモテる。そりゃあモテる。
 しかしそんなにモテるクミちゃんである。彼氏くらいいたっておかしくないんじゃないか?と思われることだろう。だがそんな心配は無用である。クミちゃんには彼氏がいるのだ。
 じゃあ何故、この哀れな男が参加しているのが不思議なくらいな合コンにクミちゃんが参加しているのか?答えは簡単である。人数合わせだ。人数合わせのために仕方なく参加しているのだ。
 うむ、これほど可哀そうという言葉が的確な人はいない。クミちゃんに同情しつつ、このような運命の巡りあわせを選択させた神を自分は恨んでおこう。

 おっと、ここで先ほどからしつこいほどクミちゃんに自分をアピールしている男が、ある1つの動きを見せ始めた。
 あー、そう言えば大体の読者は分かるかもしれないだろう。分らない読者のためにさらにヒントを言うならば、クミちゃんの自分に対する印象をよくするために、男はある話をするそうだ。
 というか、したって無意味なんだがな。例えるとダグトリオに十万ボルトを食らわすピカチュウのような・・いやはや、ポケモンを知らない人には悪い表現をしてしまったようだ。反省。
 早い話効果ゼロだ。
 家計簿をつけている・・なんて話をしてもな。

 「俺自分で家計簿付けてるんだぜ〜。偉いだろ〜。」

 自分で自分を偉いというな馬鹿!!家計簿ごときで!!
 ほら見ろ!突然の告白に女の子どころか男たちも白い目で見てるだろうが!!
 つーか、実際に家計簿持ってきてるんじゃねぇよ!!で、それを実際なぜメンバーに見せびらかす!?逆効果だろうが!!
 合コン会場に家計簿・・山の頂上にクジラがいるという場面ほど馬鹿げていてありえなくてミスマッチだ!!

 ・・2時間後。
 失礼、いきなり時間軸が飛びまくるのはこの話が不条理であるからだ。無論、展開が不条理である場面はこれからもっと出てくるであろう。というか、こういう話であることを理解していただきたい。
 何?それは無理?心配はいらない・・今後もう少し読み進めるうえで嫌でもその事実は刷り込まれていくだろう。嫌ならば今のうちに読むのをやめることをお勧めする。そしてお茶でも飲みながら有意義な時を過ごしてくれ。
 この話を語り・・いや、真面目な話執筆している自分ですら、お茶を飲んで有意義な時間をすごしながら、この話の執筆を放棄したいほどである。っと、話が逸れた。元に戻そう。
 今この男は自宅へと帰っている。手には家計簿を持っている。顔はホクホク顔だ。
 理由は簡単、クミちゃんが男に電話番号を教えたのである。クミちゃんにとっては世界一苦いお茶・センブリ茶を飲んでしまうほうがまだマシな出来事だったに違いない。
 しかし、そんな事情を知ってか知らずかこの男、とても嬉しそうなうえに・・何を血迷ったかその番号を何故か家計簿にメモをした。意味がわからない。
 この時点で・・いや、最初の時点で分かるかもしれない。この男の感性が何かおかしいということに。

 ・・遡ることそれから30分前。
 ここで時間軸がやや戻る。ちょうど男が電話番号をクミちゃんに迫っていた場面かもしれないがそんなことはどうでもいい。
 実はこのとき、この男が住み、また合コンをしていた夜の街ではちょっとした事件が起きていた。
 ちょっとした事件なのだから語る必要はないと思われるが、ここは少し語る必要があるので勘弁してほしい。ちゃんと繋がりがあるだろうから。
 えー、実はこのときある高速道路・・首都高なのかは知らないがとにかく高速道路で、事故が発生した。白い乗用車が1台、反対車線に飛び出して対向車と正面衝突をしたのだ。
 しかしまぁ、両者ともに急ブレーキを踏んだためかそこまで大破はしなかった。まぁ、前のバンパーとかそこらへんがへこんでエアバックが作動するくらいの程度のものだ。

 いや・・謝罪する。それでも十分な事故だ。だが、1つここで分かってほしい。読み進める上で5分もしないうちにこの事故が“そんな程度”と本気で思えてくるから。これは保障する。

 現場からの通報もあってパトカーとか救急車が駆けつける。が、その時に対向車と激突したいわゆる加害車両の運転手が現場を逃走したのだ。ものすごい勢いでアクセルを踏んでやや前方が壊れた車ごと。ある意味運転手は最強である。
 でまぁ、これをうけて当然だがパトカーを追跡を始めた。カーチェイスである。
 その白い乗用車はパトカーからの再三に渡る停止命令を無視して料金所のETCのバーが上がらないうちにバーをぶち破って市街地へと突入した。
 けれど警察も馬鹿ではなかった。追跡をしていたパトカーからの応援をうけ、料金所前にパトカーが何台も待ち伏せをしていたのである。
 刑事ドラマでパトカーが何台も容疑者を取り囲んでいるような場面である。哀れな男と違ってこちらはいたって真面目で深刻であるため、つくづくあの男と接点は持たせなくないと思うほどだ。まぁ、この話の中での事件だ。いつどこで不条理になるかは保証しないが。

 でまぁ、早速不条理な場面に切り替わってしまうのだが、この乗用車の運転手はきっと自動車を使ったスタントマンをやっているのだろう。
 パトカーを蹴散らして包囲網をいとも簡単にぶち破ってしまった。そして西部警察やあぶない刑事ではないが何故か料金所周辺で爆発を起こしてしまう。
 
 ・・このあたりの説明が簡単すぎるのは作者である自分自身、今どうかと首をかしげた。しかし勘弁してほしい。決して作者の表現の手段がないからではない。
 この話でそんな真面目な描写を書いてもあまり意味がないからである。これはとても重要である。
 というか、これはちょっとした伏線なのだ。・・自身で言ってしまうのもあれだが伏線なのだ。つーかこれ、全然本編の裏的部分だし。熱を入れて書くほどでもねぇし。

 そんな意外な事実に気づき、今にでも執筆をやめたくなった自分を許してほしい。といっても、この時点で何人の読者がここまで物語を読み進めているのか?それを自分はとても知りたい。
 まぁ、とりあえずここで話を本筋に戻そう。
 料金所付近を爆発に巻き込ませた車・・うーん、きっと蹴散らしたときにパトカーのガソリンでももれて引火でもしたのだろう。そこは話の都合上想像に任せるとする。
 きっとあぶない刑事とかのドラマで火薬の量を間違えるとこんな惨事になるのだろう。で、問題の乗用車はその爆発から華麗に逃げて市街地を逃走し始めた。
 ただ1つ、言うことがあるならば・・運転手も馬鹿なのだろう。自身の乗用車も爆発の影響かは知らないが燃えているということだ。

 さぁ、ここで話がやっとリンクする。
 クミちゃんの携帯の電話番号をメモった家計簿を嬉しそうに持って自宅へと急ぐ男。
 そこに突然ではあるが例の逃走する・・でしかも燃えながら逃走する乗用車が男に向って猛スピードで突っ込んできた。で、あっけないが許してほしい。
 

⇒To Be Continued...

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