アサルト・アサシンズ mission8 |
作者:
むー
URL: http://matcha4designer.2log.net/home/nocturn
2007年03月29日(木) 17時34分56秒公開
ID:fZwtP.TYi4U
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※この作品はオリジナルです。 ※話の一部に残酷描写が含まれます。 ××× アサルト・アサシンズ ××× mission8 『 a&b 3rd. 』 「(戦車代……誰に面喰って貰えばいいんだよ……ったく。)」 静寂を取り戻した最中、リックは相変わらず小部屋で煙草を咥えていた。 カチッ、カチッ、とうるさく響く時計の針は既に朝へ向かって動いてる。 「(尤も、そんな必要ねぇかもな…俺も時期に……)」 煙草を吹かす。 「……おや、……早いお迎えだったな。」 音沙汰なし、リックの背後にはテディが立っていた。 金属の塊が黒く、そして冷たく光る――― ロイヤルトが先陣を切るあの三人は戦車を眺めて休息していた。 少年は、息こそあるがガックリ項垂れていてまるで意識が無い。 ロイヤルトが戦車から砲弾を取り除き、それを寄せ集めた。 「本当に……彼は無茶をする。」 少女は落ちている肉片にライターを振りかざした。 「でも格好いいよ。すっごく。」 少女はあくまで普通のことを言ったつもりらしい。 「彼は『自分が負けるはず無い』と思い込んでいる。それはとても危険な事だ。」 肉片が嫌なニオイを発して炭化していく。 少女はそれから一度目を離して少年を、そしてロイヤルトを見た。 「ロイヤルトさん……アルト君のことになると少し感情的になってない?」 何も答えなかった。赤いサングラスの奥からも表情が読み取れないことも合わせると無表情そのものだ。砲弾の山に向き直る。 「それではチサ……これを片付けてテディと合流しよう。」 ロイヤルトのローブのどこからか、大きな鎌が剥き出てきた。 「(ロイヤルトさん……?)」 「動くな……幾らか聞いておきたい事がある……。」 テディは重々しく言い放った。リックも拳銃も、微動だにしない。 「らしくねェ。いつものあんぽんたんな調子は暗殺者生活でどこに捨てちまったんだ?」 リックは最後にこう付け足した。 「なァ? テディ…。」と。 テディは予感した。そして全てを悟ったのだ。 「お前………リックか? リック・マナ・ミフェロルなのか?」 未だに両者動きが無い。口元が見えなければ空間が止まって見えることだろう。 「いかにも。久々の挨拶がコレとは、なんか、……あれだなァ。相棒。」 リックが僅かに上を向き、宙を眺める。 「お前らしいというか、まぁ、少し切ないぜ。」 哀愁の篭った声は後ろで銃を突きつけているテディに迷いを生じさせた。右手の力が抜けていくような感覚を味わっていた。 「リック……お前も軍の時と何も変わっちゃいねぇ。大胆不敵の榴弾魔はここに健在か。」 リックが鼻で笑う。 「何だ、やっぱ変わっちゃいねぇじゃねえか。今も二丁拳銃使ってんのか。どこか皮肉ったらしい。運命(さだめ)みたいなモン感じてるぜ。」 「そんな事よりリック、どうして違法運搬なんてやってんだよ?」 大きな溜息が部屋に響き渡る。 「俺は……海軍特殊部隊だったろ? 自分で志願したのさ。昔も今も海は……輝きは失っちまったが、寛大さはちっとも変わってねぇ、そんな海が堪らなく好きだった、てコトさ。」 「だからどんなことでもする、てか? 何だそれ。」 と呆れたように笑った。 「……さぁ、話はここまでとしようか。テディ、おたくらの勝ちさ。俺を撃て。」 「なっ……!!」 テディは躊躇の声を出した。拳銃はとっくに、手の上で踊っていた。 「何をしているテディ? お前に迷いなんて似合わないぜ。」 拳銃を見つめるテディ、気付くと持つ手が震えている。 リックはさらに付け足して言った。 「忘れたとは言わせない。俺が常日頃手榴弾持ち歩いてる事はよく知ってるだろ。今ここで爆発させることも出来る。さぁ、撃て。でなきゃお前も死ぬ。」 「ま、待て。」 「待たない。」 リックの即答にテディは悟った。 「……そうだな。俺達らしく無い、か。……最後に一つ聞きたい。………軍の皆は元気か?」 「ああ。」 テディは寂しく微笑んだ。そして掛けた指に力を入れて―――― 「……リーダー……チサ……アルト……無事だったのか。」 三人がその小部屋へ付いた。チサがテディの悲しそうな表情を心配して辺りを見渡していると、床に崩れている人間を見つけた。 ロイヤルトが口を開く。 「終わったのだな。」 テディが硝煙をぼーっと見ている。 「そうだ…………終わらせ……ちまった……。」 ほとんど明け方の時刻、アサルトアサシンズの面々は人影の少ない市場通りを歩いていた。 テディは虚ろに辺りを見回す。テディの視界に入ってきたものは、野菜や色とりどりのフルーツの山、パンやフランクフルトを売るワゴン、そして公衆電話。 「………あ。」 テディが足を止める。三人も何事かと振り向く。 「悪ぃ、ちょっと電話。」 それだけいって走っていってしまった。 ロイヤルトはテディの背中をじっと見ていた。 「――3の――9っと。………。」 テディは受話器を持つと素早くある番号を押した。 その先から明るい女性の声がする。 「はいこちらノルトンウェーベル国家機関中央軍施設です。」 テディが篭った声で話す。 「あー…こちらバグナー将軍の極秘任務で動いているヒットマース、階級は大佐である。」 「はい、少々お待ちください。」 電話の向こうからガサガサと紙の擦れる音が聞こえる。テディは何となくそれを聞いて待っていると、 「確かに承りました。どのような用件でしょうか?」 「(本人かどうかとかは確認しないのかよ……相変わらずぬるい軍だコト。)」 と心の中呟いた。 「メルフィ中尉をお願いしたい。」 女性は少し戸惑ったような声を漏らして、 「えっと、その、メルフィ……中佐ですね?」 と言った。テディが曖昧な返事をすると、ブツッ、と音がして『しばらくお待ちください』の言葉が連呼されているのを聞いていた。 数十秒、長い電子音の末、威厳と堅苦しさを持った女性の声が聞こえてきた。 「……こちらメルフィ・アウリユですが。」 「久しぶりだねメルフィ君。元気にしていたかね。」 とテディが重々しく言うと、向こうからとても大きな溜息が聞こえた。 「テディ、その声よせ。お前また行方不明になった軍人の名前使って、タダで済むと思うなよ。」 テディが笑った。 「へへっ、そりゃどうも。それにしてももう中佐か? あれから半年も経ってないだろう。」 「それはあの軍に居たというのがあるからな……。」 「ああ、俺達の居た、あの軍。お前も大変だろう。」 急に声が落ちつき、暗くなる。 「ヘンな同情をするな。それで? どんな用件だ? 私を笑うために電話してきたのならば、今すぐ貴様のもとに動かせる限りの兵を動員するぞ。」 「あの軍絡みだよ……リックが死んだ。」 息を呑む音が微かに聞こえた。 「……見届けたのか?」 「ああ。」 そして沈黙が訪れる。張り詰めた空気にハサミを入れたのはテディだった。 「メルフィ、ちょっと昔話をしないか。俺とお前と、リックのいた頃の話を……さ。」 市場に人はいない。見えるはずの陽だまりは闇に隠され、にわかに雨が降り始める。 屋根がある筈の公衆電話の中、受話器の上を一筋の雨が流れて落ちた―― |
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