タイトル未定 |
作者:
xxx
2007年11月23日(金) 15時10分33秒公開
ID:IPfZq/60diM
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通いなれた通学路を歩く。 すでに一年もこの道を通っていることを考えると、感慨深くもなるものだ。 桜の色が鮮やかな四月上旬。 俺は高校2年生として始めての登校をしていた。 穏やかな日差しに包まれ、のんびり歩いてく。 すでに学校は近く、ウチの制服を着た生徒が結構いたりする。 自転車で颯爽と走っていく人も多いが、俺と同じように駅からは徒歩っていうのも多い。 ウチの高校は、駅から近いのだ。 いつもと同じ通学路。 ただ視界の隅っこで自動販売機の陰に白い球体があるのが目に入った。 「ん?」 なんだろう、あれは。 自動販売機の方向を見ようとしたとき、急に後ろから誰かが突っ込んできた。 「はよー! 真一!」 元気いっぱい突撃ボディタッチをかましてきたのは、クラスメイトの楠木 実だった。 「イテェよまったく……あれ?」 自動販売機の陰には、白い物体なんか存在しなかった。 「ん〜どうしました田中 真一選手。かわい〜子ちゃんでもいたかコラッ!」 実のテンションはいつもこうなのだ。 やたらわーわー騒いで、時として教室の空気を破壊する。 まあ、長い髪を後ろでまとめ、これまた長い髪を左右に分けて大きく見せられた顔がこれまたいいので人気者である。 俺こと田中 真一は、まあ、中の上くらいはある……あって欲しい。 「いや、さっき自動販売機の陰にサッカーボールくらいの大きさの物体が……」 「ああ? 何にも無いじゃんか。春ボケ?」 こちらが言い切る前に喋りだす。 全く落ち着きがない奴――なのだが、そいつの言うとおり何も無かった。 「おっかしいなぁ〜」 「なんか見間違えたんだろ。さっさと行こうぜ」 確かに、そんな見間違いならいくらでもあるだろう。 幽霊やUFOだってそういうものだろう。 グイ、と、手を引かれた。 そのまま引っ張られて連れ去られる。 「おいっ、ちょっと!」 コイツは人目をはばからない。 なんで俺が男なんかと手をつないで二年生初の登校をしないとならないんだ……。 俺の制止は何の意味も持たず、俺はグイグイ引っ張られていった。 ◇ いつのまにか放課後になっていた。 俺のホモ疑惑を解消するので、一日使った気がする。 「……最悪」 実は否定するどころか面白がって肯定なんかしやがった。 本当に、最悪のスタートである。 朝と同じくのんびり歩く帰路は、空き地にさしかかっていた。 大きな空き地だが、整備はされておらずボサボサとだらしなく草が生えている。 囲いも古びた金属ネットで、いたるところ塗装が剥げているのでみすぼらしい事この上ない。 そんな景色を目を細めて眺める。 早く家でも立てばいいのだが、ここは何度か行方不明者が出る曰く付きの土地なのだ。 ふ、と軽くため息をついて視線を正面に戻そうとした時だった。 視界の隅に、白い物体が映った。 「え?」 朝と同じ、白くて丸い球体。 それを見てしまった瞬間、世界が変わった。 初めは、俺以外の時間が止まったようだった。 鮮やかな夕暮れの日差しは、薄暗い夕闇のように反転した。 道を走る車は消えうせ、遠くからの喧騒も途絶えてしまった。 「は、え? 何?」 ギュウと心が縮小する。 ここの色彩は、それだけで人を不安にさせる。 ――見ツカッチャッタ。 そんな声が足元から聞こえた。 ガクガク震える足を叱咤し、下を覗く事を否定する本能を理性で淘汰する。 それでやっと、震える体は下を見た。 足元に――白い球体。 なんでもないのに、それがどうしようもなく恐ろしい。 ――ドウシヨウ、ドウシヨウ、怒ラレル。 足元でポンポン動いた後、急に動きを止め、 ――見ツカッタラ、食ベルシカナイヨネ? 半分に裂けるように、真っ赤な口を現した。 |
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