二人の障害
作者: サクラ   2007年11月19日(月) 20時41分20秒公開   ID:7V0hqzIcwiM

長い川もありません
深い谷間もありません
高い壁もありません

けれど私と貴方の間は確実に深い溝がある

貴方と私の大きな障害


/二人の障害


 夜の闇を、月の淡い光が照らしている。
 森に囲まれた小さな村。その村のはずれにある大きな湖のほとりに
 一組の男女が佇んでいる。
 男の方の名前はアイザック。
 村一番の狩人で、黒髪の、すらりとした肢体と精悍な顔を持つ勇敢な若者。
 女の方名前はジェラルディーン。
 陶器のように滑らかに白い肌と流れるような金髪、
 そして人形と見まごう程の美しく整った顔立ちの、村一番の美女。
 二人は長い間互いの瞳を見つめあう。
 長い長い静寂。まるで一枚の絵のような光景。
 その静寂を破ったのは男の方だった。

「ジェラルディーン。お願いだ、僕と結婚しよう」
「アイザック様。それは出来ないのです」
 女の透き通った声音が、夜闇に響く。
どうしてなんだい?お金の心配は要らないよ。
僕は村一番の狩人だ。君には絶対に良い生活を約束する」
「いいえ。出来ないのです」
「両親の事が心配なのかい? 大丈夫だよ、君がいなくなっても
君の家族にはいい生活が送れるよう僕は約束する」
 女は無言のまま、首を横に振った。
「君の父上も説得した。あんなに頑なに僕たちの結婚に反対していたけれど、
やっと昨夜、結婚の許しを貰えたんだよ?」
「出来ないのです、アイザック様」
 男がどんなに言っても、女は出来ないの一点張りだった。
 男は業を煮やし、そして言った。

「一体どうして駄目なんだい? 僕たち二人の間に、もう障害は無いと言うのに!」

 女は悲しそうな瞳で、男を見つめた。
 その口が、ゆっくりと開く。

「だって私は、ちっとも貴方の事を愛していないんですもの」
 
 
二人の障害/END
■作者からのメッセージ
初です。まだまだ未熟者ですが
アドバイスなどをいただければ幸いです。

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