闇の暗殺者 |
作者:
消しゴム
2007年09月14日(金) 19時04分16秒公開
ID:AEfTpL95rG2
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※もう編集中いっその事……と言う事で泉君のプロフィール変えちゃいました。 〜@・転校生〜 ピィピィ!ピィピィ!目覚まし時計の電子音が耳元で響く。 何時までも目は開かず、起きているが起き上がれない。 雪山怜治(ゆきやまれいじ)はまだ生暖かい布団から出ることは出来ない。 几帳面な怜治はいつも余裕の持てる出発の三十分前に全て用を済ませるのだが昨日は遅くまで学生らしく、勉強を夜中してた為か、とても起きられるようではなかった。 「ううん……?」 三十分前だし、少し寝てたいと怜治は思うが、起きなくてはという義務感に近い感情で無理やり上半身を動かした。 眠い目を右手でこすりつけそのまま目覚まし時計へ視線を泳がせた。 既に時は余裕に取っておいた三十分だけでは無く、既にたっぷり四十分は消えていた。 「……えぇ?」 まだうまく出ない声を上げ、同時に頭を一気にかき混ぜるようにして考えを出した。 寝過ごした、少し気が動転した。よもや自分が寝過ごすなんて思っても見なかったからである。 二階にある怜治の部屋から滑るように一階に降り、母に大声で 「か!母さん、時間過ぎてるよ!」 それは呼んだとも言えず、尋ねた訳でもなく、ただ自分の不満を暴露したと言うほうが正しいと言える。 呆れ顔の母・恵理(えり)はため息混じりに 「もう、どうしたの?もしかして夜遅くまで遊んでたの?」 少しずつ声が大きくなるが別に怜治はひるみもせず 「そんなんじゃない!勉強してたの!」 と強く否定した。それならいいけど。と小さな声で言った母の声さえ聞こえぬふりをし、食卓についた。 ご飯と味噌汁、卵焼きとサラダ。ポン、ポン、ポンと次々と出される中 出された順に手をつけ一気に平らげた。時間的にはほとんどギリギリに近く、走って学校に行くことを怜治は想像する。 高校にはたっぷり二十分はかかるのに対し、残りの時間は約十分と言ったところ。 「行ってきます」 椅子の下にある準備をしておいた学校かばんを玄関に走る勢いを殺さぬまま乱暴に取って走った。 怜治が靴を履き終え取っ手に手をかけた頃やっと恵理が追いつき 「急いでるからって事故したらダメよ、気をつけるのよ?」 「分かってるよ!」 短い返事の後、怜治は取っ手を勢いよく押した。 赤信号をまともに相手にしてたら間に合わないので出来るだけ信号を避けて走る怜治。 それでもギリギリ学校に間に合い、思いのほか早く着いたなと満足に思う怜治だがギリギリなのに代わりは無い。 教室に入った怜治は女子がやけに騒がしいのに気がついた。そのことに不信感を抱き机に学校かばんを置いて怜治は硬直する。 「なんだよ、今日はやけに遅かったな」 軽い口調でありつつもかなり強気な言葉で気になる問いをしてきたのは平岡栄斗(ひらおかえいと)、怜治の友達だ。 突然の問いに戸惑い、女子に向けてた視線をえ?え?と言いながら探り当てるように栄斗を見た怜治に対し、先程怜治が見た光景に視線を泳がしその先にある女子を見てニヤニヤと笑い 「ん〜?意中の女子でも見つけたか?」 又もや軽い口調で怜治に茶々を入れた。怜治は首を振ってそれを即座に否定し 「いや、なんか今日やけに女子が騒がしいなと思っただけで……」 と、先程の疑問をぶつける。別に遅れた理由を栄斗は特に追及しなかった。それどころか 「ああ、なんか新しい転校生が来るらしくてな、そいつが男子なんだよ」 と、怜治に愚痴を言い始めた。左手で頬杖をつき呆れ顔でさらに 「イタリアの留学生なんだよ、おかげで女子は大興奮、男子としては全ッ然!面白くないね」 「……そ、そう……。」 そう付け加えて語る栄斗は、一男子として留学生に不満を持ってるらしく改めてみるとかなり不機嫌そうだった。 その不機嫌に対し、素早く同意をする怜治。 二人のやり取りは栄斗の一方的なもので終わり、チャイムが鳴る。 「あ、俺席戻るわ、んじゃ、後でな」 「……ああ、そだね」 怜治は既に栄斗のことより転校生の方を考えていた。 (どんなんだろ?金髪…とか?いやそれはないか、じゃあ身長が高…) 「ぁーい、ホームルームの時間だぞ〜。」 気楽な声を上げたのは担任の福村(43歳・独身)である。 その笑顔は見たものに不快を与える、その無駄と言っても余りあるその笑顔が。 「今日は皆に新しい仲間が増えるぞ〜。」 どこか間延びした声は凄く苛立つものだ、と怜治は思いつつもいつまでもほくそ笑む担任を見ていた。 そしてガラッと扉をあける。皆(主に女子)が注目する中少しずつ姿を現してゆく転校生。 その姿が全てできった時女子の歓喜の声はまさに嵐と呼ぶに相応しかった。 少し茶色のかかった髪と長身。男子のわりに髪は長く、全て下げたら肩の辺りまでありそうな髪の長さだった。 その髪を丁寧に黒いゴムで巻きつけていた。 目はやや鋭く、他の男子よりやや大きめの体つき。 学生服のボタンも上まできっちりつけて、いかにも「優等生」と言う言葉の似合う少年だった。 女子の歓声に戸惑ってる様だが、いつまでもそんなことは気にしない。 名前を書き自己紹介に移った。 「僕の名前は泉啓介(いずみけいすけ)と言います。イタリアから帰国する前にこの辺りの地図は全て把握しました。 でも正確には分かってないので、誰かと一緒に出かけてくれると嬉しいです。」 何を言ってるんだと批判する男子に対し、今もなお潤んだ目で泉を見てる女子達。 全くの食い違いである。そんなことには目もくれず、泉は 「出来るだけ早くクラスに馴染み、皆さんと楽しく勉強や行事を楽しめたらいいと思ってます。」 と付け加えた。見てて幸せになるような微笑が、怜治にはただの「営業スマイル」にしか見えなかった。 出番だ出番だと、後ろから担任が出てきて 「うし。じゃあ、席は……新井の隣な」 ちなみに新井は怜治の右後ろ。空いてる席は丁度怜治の後ろの席だった。 (げっ、空いてるから嫌な感じはしたけど……、なんて接したらいいんだ?) ほとんど友達と話す時は向こうから、だから話しかけるのに怜治は戸惑った。 しかしそんな不安をよそに泉はさっさと席に着き悩んで頭を抱えた怜治を覗き込んで 「おはよ。これから宜しく」 と先制攻撃が飛んできた。ふぇ!?っと情けない声を出しながら頭に整理がつかぬまま 「あ、ああ。宜しく」 と怜治は頼りない返事をした。 |
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