RUNE SHADOW 第七話 |
作者:
ラスレイ
2007年09月09日(日) 19時49分42秒公開
ID:.ePzohpbKOU
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白い翼は黒い爪に向かって誰も適わない様な速度で突進する。 しかし、反応速度は素早く、ラルドの剣による攻撃をアレンは右手の剣で受け止め、左手の爪でラルドを切り裂こうと、横腹へと向かう。 それに気付いたラルドは翼を羽ばたかせて上昇しようとするが、相手はとっさに剣を捨てて、ラルドの腕を掴む。 「ちっ…。」 相手に武器は無く、今攻撃すれば確実に斬れる。 しかし、それでは相手の攻撃にも当る。 更に分が悪く、黒爪は治癒能力に特化した種族なので、斬っても回復される。 「おらぁ…!」 ラルドは腕を持たれたまま、自分の身体のみを浮かせて爪による攻撃を避ける。 そして、そのまま腕を振り払って空いている左手で渾身のパンチをお見舞いする。 「ぐっ…!」 アレンはそのまま吹っ飛ばされた。 「流石…、白翼…貴様、もしや白翼王か?」 「…、問題あるか?」 「そうか…王か…。」 「貴様も王…だろう? 同じラグルだ、それ位理解する。」 ラルドとアレン、2人の顔は一瞬曇る。 「俺も王だ…。」 「へぇ…5年前のあの日、絶滅寸前のラグルは帝国ベグライルが罪滅ぼしに残った王と僅かな民に種族ごとに宮殿を与えていると聴いたが?」 「黒爪王である俺は、民と共に帝国を後にして別の場所に住んでいる。全員、紅牙入りしている。」 「いずれ、帝国を落とすのか?」 「さぁな…、5年前、俺はお前の心臓を確かに一突きした。なのに何故生きている?」 アレンの声は低くなった。 「白翼は身体能力が上昇しない代わりに…戦ったラグルの能力をトレースする。その後に黒爪の能力を使っただけだ。しかし、魔力を使うんでな、あまり多用できない。」 「そうだったか…。」 アレンは納得した様な表情になる。 「さて…、いっておくが俺は空間の属性だ。先程の戦いや5年前では共通魔法しか使わなかったが…。」 ラルドは突然言い出した。 「そうか…私は時だ。貴様の魔法で消えることはない。」 「へっ…! これで本気で戦えるな…。」 「そうだな…!!」 2人は突然表情が明るくなった。 「おいラルド…、魔法ってのはどうやって成立する物か…知っているか?」 今度はラルドでは無く、アレンが殺気を鎮める様に微量の声で言う。 「? 人の身体に溢れる魔力を使って理を捻じ曲げて発動する力の事だろ? 大体、今は戦いだ――」 ラルドは少々、怒鳴ったが、その言葉はアレンに即座に遮られる。 「流石、魔学に明るいな、白翼王。そう、なら、どうやって魔法は成立する?」 「…? 魔法とは近い未来を予測して予測した時が来たら勝手に発する物だ。何が言いたいんだ?」 「ふふ…、もうスグ解る。では遠い未来は予測できるのか?」 「貴様、俺をなめているのか? 魔法とは元を辿れば神の力、あまりに遠い未来を予測するのは神の力だ。人の器では近い未来しか予測できない。遠い未来を予測すれば代償として命を失う。」 「では、魔法とは何なんだ? 何故、魔力を使わないといけない?」 「それは…、まだ解っていない。アレン…、貴様は何が言いたい? 俺に殺されたいのか? こんな雑談何時までも――」 怒鳴ったものの、アレンは無視して続けた。 「ここからは俺が王城の隠し文庫で独自に調べた。魔法とは神にとって手足の様な物。神が魔法を使うのは人がパンチやキックをする様なものだ。」 ラルドの怒りは静まり、段々とアレンの言葉を聴いていた。 しかし、敵なので油断と隙だけは見せなかった、無論アレンも。 「人にとって魔法とは神の絶対領域。使えないもの。そこで、自らの身体に宿る魔力を使った。魔法が無かった時代、自然を使って火や明りを灯していた。魔力によって人の器を大きくして、使う魔法よりも器を大きくする事で魔法が使える様になった。魔力はなくなるが、休めば回復する。」 「…。」 ラルドは何時しか黙っていた。 「つまり、圧倒的魔力を持ってすれば、遠い未来を予測して使うことが出来る。紅牙はそれで邪神の復活を予測する…! 圧倒てきな魔力を持つ社長と、ルーインでなっ!」 「! なら…。」 「そうだ…! この事が解ったのがつい最近、賢者を捕まえる手間が省けた…。後は邪魔な貴様らを殺すのみだ…! いい事を教えてやろう…。賢者共は今、アデューラの賢者の長の所に集っている。しかし、貴様達は此処で散る…っ!」 突然、アレンの魔力は暴走と膨張を始めた。 「さぁ…、存分に行くぞ…!」 左手のみであった黒爪は黒い部分をまして、身体全体を包み込んで、耳や牙を生やす。 「…! 王といえど、超化をすれば、タダでは済まないぞ…!」 「ショウチノウエダ…。」 アレンは体が黒い狼の様になっていた。 「オォォォォォォォン…。」 超化とはラグルの最終奥義、力の強い王といえど、体力と魔力の浪費は激しく、使用後2日は寝込む。 本来、ラグルは動物の一部を己の体に変えて殺傷能力を高めたり、防御を高めたりするもので、超化は元の動物へと数分の間のみ姿を変える最終手段である。 左手を変える黒爪は狼、翼を生やす白翼は白鷺、右手を変える獅子はライオン、両腕を硬化、甲羅に変える亀骨は亀、身体を媒介として、竜に身体全体を変える黒竜は黄金の竜に。 「グルゥゥゥ…、キサマハチョウカシナイノカ? オレヲナメルナ、チョウカセズニタオセルトデモ?」 「…、超化は最終手段だからな…使いたくない…。」 「ナラバ――」 「でも、今の状況じゃそんな事いってらんないな!」 アレンは突然、喜びに満ち溢れた顔をした。 相手が超化すると、解ったから。 「…。」 ラルドは目を閉じて、翼で身体を覆う。 蒼白い光がラルドを包み、やがて、長いクチバシ、白い毛並みの身体をあらわにする。 「キルゥ!」 白鷺が翼を振るうと、美しい羽根が飛び散る。 (ゆくぞ…。) 「ネンワカ…マアイイ…、コッチコソ!」 黒狼は一瞬で残像を残して消え去った。 しかし、白鷺の方が圧倒的に速度では上だった。 翼を羽ばたかせれば、辺りが突風に包まれる。 「オォォ!」 突風を起こし続けていた白鷺は突如、黄色く光る黒狼の眼に気付いて一気に上昇する。 しかし、黒狼の跳躍力は高く、飛び上がった白鷺の横まで上昇する。 「クラエッ!」 鋭い爪で白鷺を切り裂く…が、それは残像だった。 翼のある白鷺の方に空中戦では分があり、黒狼は分が悪い。 「クッ!」 白鷺は黒狼の背後に出る。 黒狼も解っているが、空中では身動きが取れない。 (…これで…。) 黒狼の背中を足で掴んで、上昇、そして急降下する。 (終わりだ…!) 漆黒の地面に黒狼を叩きつける。 酷い砂埃があった。 白鷺は砂埃を見つめている。 すると、突然、物凄い速度で白鷺の腹辺りを黒い何かが貫く。 「まだだ…!」 そこには血塗れのアレンがいた。 (くっ…。) 腹部を貫かれて超化を解いたラルドは力なく囁く。 「くそっ! 何故…、たい…りょく…。」 そのまま力なく倒れる。 (…死んではいないな…。) シャドウホールは一気に崩壊を始めた。 |
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