妖怪退治屋 鬼百合姫子
作者: カロカロ   2007年08月25日(土) 20時17分38秒公開   ID:ShzFM8A04DA
【PAGE 1/5】 [1] [2] [3] [4] [5]


《プロローグ》

「・・・よいか姫子、明日よりお前は正式な鬼百合家一六代目退治屋となる。
この仕事にはこれが欠かせなくなる、よってこれをお前に授ける。」
そう老人は言うと手にしていた何やら布に包まれている小さな四角いものを暗闇に向けて投げた。
普通ならここで四角い物の落ちる音がするであろう、しかしその音は無く、代わりに暗闇からさっき、老人の持っていた四角いものを持った⒖歳位の少女が出てきた。
「ありがとうございます。」
そう少女は言うと瞬く間に去っていた。
その頃、禍々しい者が目覚めたとも知らずに・・・

《第一の巻 放課後の妖怪退治》
ピピッー ピピッー ピピッー
「う、うーん、今何時だ?」
まだ眠そうな顔をして少年は鳴っている目覚ましを止め言った。
彼の名は坂上正志、⒖歳でこの春、隣町にある私立虹ケ丘高校に入学する事になった高校生である。
彼にはとある理由で人には言えないことがあった。
それについてはまた後々説明するとして、正志は静かに目覚ましの文字盤を見た。
時計は正志の期待を裏切り、無情にも7時30分を示していた。
これでは完全に遅刻しそうだ。
正志はそれを見ると顔を青くして言った。                    
「うえ!も、もう7時30分!?や、やべえ、初日から遅刻しちまう!」
そう正幸は言うとすばやく着替え、朝ごはんを抜いて走って玄関を出て行った。
「いってきます!」

 その頃、ある少女も同じように急いで学校に向かっていた。
「ああ、私としたことが、術具を磨いて今日が入学式なのを忘れるなんて!」
彼女の名は鬼百合姫子、⒖歳でこの春に正志と同じ虹ケ丘高校に通うことになった少女である。
姫子が走っていると十字路が見えた、この十字路を右に曲がれば姫子の目指す虹が丘高校である。
姫子が曲がろうとしたその時だった。
ドン!
いきなり何かが姫子の体に当たってきた、姫子がどうしたのかと見ると姫子の体に自分と同じくらいの少年がのびてもたれかかっていた。
そして姫子がそれを確認した後、前方を見ると目の前に異常に長い木綿生地が浮かんでいた。
それを見ると少年を退け言った。
「でたわね、妖怪、私が退治屋になったからには覚悟しなさい!」
実を言うとこの姫子と言う少女、妖怪専門の退治屋なのである。
元々、姫子の家は江戸時代から代々、妖怪退治を仕事としている家系なのである。
姫子はなにか四角い、包まれたものを取り出し何か呪文のようなものを唱えだした。
「・・・天に向けるはわが羽衣、天の主よ、今こそ我に力をかさん、標的、一反木綿、威力一、爆雷降臨。」
姫子がそう言うと言い終わった途端にさっきまで晴天だったはずの空に雲が出来、一反木綿に5から6本の雷が落ちた。
するとさっきまで一反木綿が居た所は雷で黒くなっていた。
しばらくして気を失っている少年を見て姫子が言った。
「さて、これからどうするか・・・」

「う、うんー。」
正志は虹ヶ丘高校の保健室で目を覚ました。
体育館だと思われる方から人の拍手が聞こえる、どうやら自分は結局、入学式には参加できなかったらしい。
正志がそれを気にしているといきなりカーテンが開いた。
そこには白い服を着た職員らしき女性がいた、たぶん保険の先生なのだろう。
するとその保険の先生らしき人が言った。
「ああ、起きたのか、言っとくけど体の調子が良くなったら勝手に出てってくれない?
私もいろいろと忙しいから。」
そう言うと椅子に座ってなにやら本を読み出した。
それを見ると正志はぜんぜん暇そうじゃないかと思ったが別にこれ以上いる理由も見つからなかったので出て行った。
それから正志はまずは自分の教室を探し出すことにした。
しかしこの作業にはなかなか苦労した、なぜなら自分のクラスが何組か忘れたからである。
正志がそれでしばらく苦戦していると不意に声をかけてきた人がいた。
「どうしたんですか?もしかして自分の組がわからないとか?」
正志がずいぶん失礼なことを言うな、と思いその声のした方に振り返るとそこには見た事のある美少女がいた。
正志はその美少女を見て驚いた、なぜならさっき、正志が保健室にいる時に夢だと思っていた出来事に登場した少女だからである。
一方、さっき正志を運んできた正志側から見た美少女、姫子は気まずかった、さっきの一反木綿との戦いを見られたかもしれないからである。
実を言うと姫子の家、鬼百合家の他にも妖怪退治屋はおり、全国に広まっていて妖怪退治屋連合という組織を作っている、姫子はこれからその連合になんと言う妖怪をいくつ倒したのかを一月に一回報告して報酬をもらうのである。
しかしこの連合というのが厄介で一般人には知られてはいけなくなっている、もし知られた場合は知った者を殺すかパートナーにしなければならないのである。
しかしそれのどちらもしたくない姫子は他人のフリをして様子を伺うことにした。
そうとは知らない正志は自分の思い違いだといけないので姫子に聞いた。
「あのー、どこかで会いましたか?」
そう正志が言うと姫子は動揺したが顔に出さずに言った。
「さあ?ところで何でこんな所に?」
その姫子の質問でどうして困っていたのか思い出し、正志は姫子に聞いた。
「ああ、そうだった。あのー僕、組がわからなくって、どこに組が書いてあるのか分かります?」
正志がそう言うと姫子は下駄箱を指差し言った。
「下駄箱の横に貼ってありますよ?」
そう姫子が言ったので正志が下駄箱を見ると本当に貼ってあり、見ると自分は1年D組に書いてあった。
しばらくして、どうやら一緒に見ていたらしく姫子が言った。
「あ、君ってなんて名前?」
姫子の質問に本能的に正志は答えた。
「ああ、坂上正志って言います。」
すると姫子は驚いたように言った。
「え!それじゃあ私たち同じ組だね、私、鬼百合姫子!宜しく!」
それに釣られるように正志は言った。
「え?ああ、そうだね、宜しく。」
そうこうしていると始業のチャイムが鳴った。

そしてその放課後、正志は朝の姫子について考えていた。
「絶対どっかであの子を見たことがあるはずなんだけど・・・」
正志がそう言って考えているとふと正志の目に姫子が教室からこそこそと出て行く所が見えた。
それを見て正志は追うことにした。
それから十分後、姫子は正志に尾行されていることに気付かず体育館裏にいた。
「おかしいな、確かにここら辺から強い妖気を感じたんだけど・・・」
一方、姫子を隠れ見ている正志は何か嫌な感じがした、その時だった。
いきなり姫子の後ろの草むらが蠢いて姫子に飛びかかった。
それに姫子は気付くとその草むらからの攻撃をかわし、ひらりと舞い、朝の時の布に包まれた四角い物を取り出した。
そして姫子はしばらく何か言うと、朝のように、なにやら呪文のようなものを唱えだした。
「ち、出たわね、妖怪、成敗してやる。」
「天に捧げるは我が羽、天の神よ、我が羽に今一時力を授けん、標的、妖魔一体、雷神降臨の舞。」
姫子がそう言った瞬間閃光が走った。
しばらくして正志が目を開けると、姫子の前に5m程度の黄金色に光る美女がいた。
その美女は実に穏やかな顔をしていた。
それを見た姫子は勝ち誇ったように言った。
「私の勝ちね、さあ、妖怪よ、おとなしく異界へ帰りなさい。さもないと雷神の怒りを受けることになるわよ。」
すると妖怪はもぞもぞと動き、言った。
「くはは、笑わせてくれる。お前のような若い者がこのワシ、毛羽毛現様を倒せると思うてか。」
「う〜、言ったわね!せっかく人が気を遣ってあげたというのに、もう許さないわ。
雷神、やつけて!」
そう姫子が言うと美女が静かに手を上げた。
するといきなり空から凄まじい閃光を放つ雷が毛羽毛現に落ちてきた。
しかし、その雷はあっけなくかわされ、毛羽毛現は、姫子をからかうように動いて言った。
「ほれ、小娘、言ったとおりじゃろうが、次はワシから行くぞ・・・」
そう言うと毛羽毛現はすごい速さで雷神を突き飛ばすと、姫子に突っ込んで来た。
姫子はそれを見ると、とっさにその攻撃の軌道を読み、雷神に命令を下そうとした。
しかし、姫子が雷神の居た所を見ると、もう雷神はさっきの一撃で消滅してしまっていた。
それを見て姫子がやられるのを覚悟した、その時だった。
突然、姫子と毛羽毛現の間に、正志が滑り込んだ。
するとどうした事だろう、毛羽毛現が正志に当たった瞬間、ふっ飛んでしまったではないか。
目の前で起きたことに、姫子は少しの間困惑してしまった。
しばらくすると、正志が姫子の手を引いて言った。
「・・・にげよう・・」
まるで、今にも消えそうな小さな声だった。
しかし、正志の腕の力は意外に強く、姫子は正志に引かれるがままにするしかなかった。

《第二の巻 二人はパートナー❤》
「ねえ、ここどこよ?」
姫子がそう言うと正志は少し不機嫌なのか怒ったように言った。
「見れば分かるだろう!神社だよ、神社!」
今、姫子達は何とかさっきの毛羽毛元を撒いて小さな神社の敷地の中にいた。
時子は正志を見ながら言った。
「ふ〜ん、まあいいわ、とりあえずさっきの事についてはお礼を言っとく、ありがとう。
ところであなた、何者なの?妖怪が見えるみたいだし、さっきなんて妖怪を吹っ飛ばしたわよね?民間人にはできるはずないわ。」
姫子がそう言うと正志は静かに言った。
「君こそ何者なんだい?質問する前に自分から言うのが礼儀だと思うけど?」
確かにその通りである、しかし、正志が何者か分からない以上、教えるわけにはいかなかった。
すると、事情を察したのか正志が笑い言った。
「別に言いたくないんならいいよ、多分、僕ら同じだと思うし。」
そう言うと正志は語りだした。
「まず僕は阪上正志、今日の朝、話したから知ってるでしょ?そして君が最も知りたがっている僕の正体だけど、僕の正体は妖怪退治屋連合直任北九州部第百区、虹ケ丘妖怪退治屋、つまり君のパートナーって事。」
しばらく沈黙が流れた、その間に姫子は考えた。何故自分のパートナーなのかを、そしてどうしてこうなっているのかを、しかしその結論が出る前に現実に戻ることになってしまった。
正志が声をかけたからだ。
「どうやらそうだったみたいだね、ところでさっきの君の式神を見たけど、どういうこと?君はあんなに強い式神を持っているのに強さが中ぐらいの妖怪に苦戦するなんて、どうかしたのかい?」
「な、なによ!私に文句言う気!あんただってさっき逃げたじゃない!そんなに言うんだったらあんたの式神見せなさいよ!」
「別に文句があった訳じゃないんだけど・・・でもそんなに見たいんだったら・・・」
そう言うと正志は制服のポケットから小さな細長い銀色の棒を取り出した。
そして、しばらくすると、呪を唱えだした。
「神に捧げしは我が力、神よ、円を描き使い魔を降臨させたまえ、一式、黒椿。」      正志がそう言うと次第に棒は光だし、ついには直視できないほどになっていた。
そして、いきなりその光が一瞬、弱くなったかと思うと、ポン!と軽快な音を立て式神召喚された。
しかし姫子はその式神を見て、自分の目を疑った。
なぜなら、そこには今、姫子の使える呪文の内で一番強い呪文、『雷神降臨』つまり、さっき破られた雷神の召喚の時、召喚するために力を借りた天の神こと、天神がいたからである。
 通常の妖怪退治屋は、式神などの使い魔を召喚するには、それよりも高位の使い魔の力を借りて召喚しなければならない、ちなみにこの位は式紙・小精霊・式神・精霊・神・世神の五つに分かれていて、当然の様に位が上に上がるにつれて、術者の格、呪力の消費、などがそれに応じて必要になる。
ちなみに、姫子が召喚できるのは妖怪退治屋平均の式神クラスまでで、通常このクラスまでできれば一生これで食べていけると言われている。
つまり、正志は神クラスまで召喚できるので、姫子とは基本的に格が違うのである。
「・・・え〜と、これが僕の召喚ができる一番高位な式神なんだけどどうかな?」
正志がそう言うとさっきまで、あまりのショックで何も言えなかった姫子はやっと我に返り言った。
「あっあなた、神クラスまで召喚できるの?ほんとにあなた何者なのよ?」
正志は少し困ったような顔をすると苦笑して言った。
「君がしっかりとパートナーとしてできるようになったら教えてあげるよ。
ところでこれはもう上の決定だからもうどうにもならないけど、もうこんなに暗いけど、どうする?」
姫子が正志に言われて見てみると確かにもう暗くなっていた。
結局、その日、姫子は正志から何も聞きだせず、帰ることになってしまった。
その日の夜、姫子は姫子の祖父の鬼百合源次郎に呼び出された。

⇒To Be Continued...

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集