追憶〜イッシュとその分隊
作者: 露骨さん   2017年04月01日(土) 23時28分17秒公開   ID:UQhfvgQyrlU
分隊員 隊長!お疲れ様です!

隊員にとても慕われている男がいた
これはイッシュの過去のお話。

イッシュ おう、お疲れさん。どうだ、調子は
分隊員 はい、元気です!
イッシュ そうか、俺が聞きたかったのは任務のほうだったんだがな。ははっ。
分隊員 し、失礼しました!我ら第六分隊は順調に進路を進み、計画通り明日には任務予定地に着く予定との事です!
イッシュ ならいいんだ。

ルキスラ王都直属部隊 第六分隊隊長。それがかつてのイッシュの肩書き。
その彼の元にある1人の新人隊が所属することとなった。
名はクレハ。彼女は前線で戦う…のではなく後ろでの支援が主な活動であった。
職業はバード、歌での支援を行う。
まだ兵士になって半年の新人である。

そんな彼女が任務へ出ると、後ろで歌っていれば良いものをまだまだ右も左もわからないに等しいクレハはよくボロボロになって帰ってきた。
イッシュはそんな彼女に戦い方、支援の仕方から何まで教えていた。
ほとんど役に立たない彼女に世話を焼き、指導をするその姿は少しづつほかの隊員にも影響していった。

悪い形で…

ある日、イッシュはほかの隊員数名とともにルキスラ周辺の巡回を行うため、分隊の拠点を離れていた。
そこをねらってとある事件が発生した。

クレハ ふーふふーん♪
分隊員 クレハちゃん、ちょっといいかい?
クレハ はい?何でしょうか
分隊員 手伝って欲しいことがあるんだ。こっち。
クレハ いまいきます。
分隊員 ちょっとさぁ、これ運んでくんない?

渡されたのは大量の水の入った樽。
いくつもの樽があった。

分隊員 俺らだけじゃ人数たりねえんだ。たのむわ。
クレハ は、はい!
クレハ(もてるかなぁ)

第六分隊は男が多いとはいえクレハのような女性隊員もいた。
女性隊員達はイッシュに可愛がられるクレハをよく思っていなかった。
男性隊員の一部は可愛いクレハに悪戯しようと思うやつもいた。
彼らが組んだのだ。

クレハ よいしょ、よいしょ。
分隊員 あそこに置いといてくれー。
クレハ わかりましたー

樽を外に運び出すクレハの足を目掛けて女性隊員が棒を突き出した。
足元の見えていないクレハはつまづき、転ぶ。すると運んでいた水が彼女にかかる。
やった女は心配しているかのように駆け寄り、大丈夫?などという。
足を引っ掛けられたと思っていないクレハは、すみません、私がドジだから。という。
女はほら、風引くから服脱いで着替えな
とその場で着替えさせようとした。
だが、そこには男達が沢山いる。はじているクレハは嫌がる。
そこへ隊員が、おい、みんなクレハちゃんのサービスシーンだぜ!と下卑た声を上げ、取り囲む。

クレハ や、やめてください
分隊員 おら、戦いで使いもんになんねぇんだ、こういう所で役に立ってもらわねぇとなぁ?
女隊員 ほら、はやく脱いじゃいなさいよ
クレハ や、やだぁ、やめて!離せ!
女隊員 先輩に向かってなによその口の聞き方!隊長のことといい、ほんと腹立つわね!
この約立たず!

もちろんこのような事をよしとしない正義感強い隊員もいた。

分隊員 おい、なにやってんだ!やめろ!
分隊員 んだよ、いいところじゃねぇか、すっこんでろ!
分隊員 いいところだとかしう言うのじゃあない!嫌がってるだろ!
女隊員 なによ、しらけるわねぇ。
分隊員 だまれ、このアマ!
女隊員 はぁー?黙るのはそっちでしょ、ブサイク!
クレハ や、やめて、やめてぇええええ!

その場が大喧嘩になる直前。

イッシュ おい、なんだ、どうしたこの騒ぎは。
分隊員 た、隊長!
イッシュ …なにしてる?
分隊員 あの、そのー。…
分隊員 こいつらがクレハさんをいじめてたんです!
イッシュ …はぁ。おい、お前ら、なんでそんなことしてんだ。
女隊員 だって、こいつ生意気なんですもん!使えないくせに!
イッシュ お前も新人のころは同じようなかんじだったぞ。いや、クレハの方が仕事の飲み込みは早い。まだまだだがな。それに人間性もちゃんとしているようだ。
女隊員 ッ!酷い!
イッシュ お前らには期待していたが見損なった。クレハ、大丈夫か?
クレハ は、はい…
分隊員 こいつらの処遇はどうしますか、隊長。
イッシュ 脱隊だ。荷物をまとめて出ていけ。今後もこのような事があっては困る。厳しい処分かもしれないが。
分隊員 …クソ!分かったよ!出てってやる!
女隊員 …うぇーーん
クレハ あ、わ、私のせい…?
分隊員 いいや、クレハさんは悪くないよ。ごめんね、こんなひどい目に遭わせて。
イッシュ クレハ、今日はもう部屋に帰っていいぞ。すまんな。

クレハは部屋に戻り、一人泣いていた。
彼女の鳴き声だけが響いていた。

次の日、クレハは感謝をしようとイッシュの元を訪ねようとした。
だが、拠点に入ってくすぐ隊員たちの様子がおかしいことに気がついた。
なにやら重い空気が流れている
いつも拠点にいるときなら挨拶をししてまわっているイッシュの姿がない。まだ来ていないのだろうか?

すると昨日彼女を助けた分隊員、サレスがメガホンを握った。

サレス 知っている人もいるかと思うが、昨日の騒動で沢山の隊員が脱隊処分を受けた。
あれだけの数を脱隊させたんだ、誰かが責任をおわなければならなかった。
ここまで言えばわかるだろう。なぜ僕がメガホンをとっているのか、イッシュ隊ちょ…イッシュさんがいないのか。
…イッシュさんは先の騒動の責任をとり、昨日付で辞職された。よってこれからは僕、サレスが、第六分隊長となる。
クレハさんあなたは悪くない。ダメージはでかいかもしれないが、君がよければまた僕達と一緒に戦ってほしい。
君の歌にいつも励まされている!やる気がでる!これからも僕達を支えてくれ!

サレスはそう言っているが、クレハは辛かった。自分の弱さ故に大事な人を失った。サレスにイッシュはどこかと聞いても教えてくれなかった。
クレハは後悔した。そして、強くなると決めた。だれにもいじめられないようにではなく誰かを助けられるように。
自分を助けてくれたサレスやイッシュよりも強い兵士になると決めた。
そうすればきっとイッシュが帰って来ると思った。

クレハが独立し、レッドホークスを建て、都市中央部最大ギルドのマスターとなるのはその少しあとの話。
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