パイプおじさん
作者: コシミカリ   2010年03月28日(日) 22時51分27秒公開   ID:DB3v3EfE.1E

交差点の道を真っ直ぐ進もうとすると、いつもあの人を思い出す。
その人の名前は…

パイプおじさん。

私が勝手に付けた名前だが、きっとこの話を聞けば、だいたいは理解出来ると思う。


これは、夏休みに入る少し前の出来事。
小学生の私は夏休みという期間を考えた人に本気で感謝しながら、鼻歌を歌い下校をしていた。

帰り道の途中にある交差点を通過しようとした時。私はある人と目があった。

「…うわぁ…怪しい人だぁ…」

その人の格好は、夏だと言うのにもかかわらず黒い長袖のタキシードを着ていて、頭には黒いシルクハットをのせ、片手には杖を持ち、口にはあのポ○イのようなくわえタバコをしていた。

いくらビリから数えた方が早い成績NO.1の私でも、ぱっと見で分かるほど怪しいという事がわかる。
私は出来るだけ目を合わせないようにしながらその人の隣を通過する。

でも、私はその人と目を合わせてしまった。いや、自分から合わせた。

何故かって?
それは、あのくわえタバコの煙の匂いにつられてしまったから。
くわえタバコから出てくる煙は私の大好物のチョコレートの匂いがしたのだ。

「…チョコの匂い?」
私はその人に手招きをされ、ゆっくりと近づいて行った。

「ダメだ!!知らない人についていったら大変な事になるって先生が言ってたじゃない!」

心ではそう思っていたが、体が勝ってにその人に近づいていく。

はぁ…。子供の好奇心というのは怖いわね…

さて、ここまできてしまったが、何をされるのだろうかと私は心の中で思っていた。
「♭♪*/“〒〒#♭””※!!!」

はい?今の何語デスカ??
私は訳も分からない言葉を数十分聞き続けていた。
もう帰ろうとしたとき、その人はシルクハットからくわえタバコの元(?)のような物をいくつか取り出し、私にどれか一つあげると言っているかのように指を差した。

「チョコの匂いのやつがいい!」

私が言うと、その人はにっこり笑ってくわえタバコの元をくれた。

私がその元をずっとながめて、お礼をしようと見上げると、そこにはもう誰もいなかった。

家に帰り、私は今日の出来事を家族に言うと誰も信じてくれず、逆におこられてしまった。
私は頭にきて、自分の部屋にこもった。そうだ!これを見せれば、信じてくれるハズ!と思い出して、あの人からもらったくわえタバコの元を探した。

だが、それもどこにもなかった。


---それから数年たった今、私はまだ、あのおじさんを忘れていない。

あれは、夢だったのか、それとも子供にしか見えない妖精的な何かだったのか。

あのおじさんが、どんな正体なのかなんて分からないけれど、あの交差点でまた会える事を密かに信じている自分がいる事は内緒。
■作者からのメッセージ
初めての投稿だったので、どんなお話にしようか迷っていた時、おじさんの事を思い出して、小説にしました。
今後も色々とお話を書いていきますので、よろしくお願いします!

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