海の上のワルツ |
作者:
壱樹
2009年11月22日(日) 13時03分14秒公開
ID:ZRl.mLjhGG6
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満月が映える艶やかな海に、『海の魔女』と呼ばれる人魚の歌姫がいた。 その人魚は王都の南部に面する海におり、その土地に住まう者らは満月の夜の海には決して近づくことはなかった。近づけば、人魚の歌声に魅入られ、海の王の餌食になるからだ。 幼い頃より言い聞かされるこの話を地元の漁師たちはしっかりと守り、船を出すこともしない。誰もがこの海に近づこうとはしないのだ。 しかし、この日だけは違った。 王都から訪れた王子がこの海にやってきたのである。 ・・・ 「♪〜〜♪〜♪〜〜…」 岩場に座り込み、美しくも切ない歌声を披露するのは海の王の娘・リーシャ。 彼女には一つの夢があった。 『世界一の歌姫になること』 王都一の歌姫と呼ばわれるアイーダも、天使の歌声と評されるラスタでさえもかなわない歌声を持つリーシャは、『世界』を目指していた。 そして、己の歌声を聞いてもらうため、リーシャは満月の日に海に出て歌う。 ふと、歌声が止んだ。 (…………?) 波の音に紛れて、微かに叫び声が聞こえる。 「……った、……てー…! 助っ……!」 岩陰から離れて聞こえた場所に行くと丸太に必死に掴んでいる人間が海に浮かんでいた。 |
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