手紙
作者: 安達亜裕美   2009年10月14日(水) 19時13分29秒公開   ID:V77pQDaE4xk
死んだ人間が手紙を渡す。
条件は一つ。強く想うだけ。
”まだ、生きていたかった”と。
そしたら、”幸福の手紙”を届けに行きます。
”幸福の手紙”は自分が相手に伝えられなかった事や言えなかった事が”手紙”という形で相手に届きます。
それを届けるのは10人の配達人。そして、1人に1人付く守護天使。
守護天使は神を目指し、配達人はそれを手伝う。神の座は配達人の配達した数で決まる。
もし、自分の守護天使が神になったら、配達人の願いを一つ叶えられるーー
そして、配達人と守護天使が一つになった時
この人達を”セフェラ”と呼ぶーーーー


「ねぇ、エル。」
「何。」
エルという少女は素っ気なく返事をした。少女は金髪の肩より少し上で、Tシャツ、半ズボン、首には黄色いスカーフを巻いている。
「次の手紙はどんな感じ?」
「んと・・・恋愛系?」
「最近多いよね。」
「うん。ねぇ、ザドキエル。君はスカーフにしか変身できないのかい?」
どうやら、エルという少女はザドキエルというスカーフとしゃべっている。
「残念ながら。」
この会話は、浅草高校という高校の屋上で行われていた。
この二人は”セフェラ”
少女が配達人。スカーフに変身しているザドキエルが守護天使。
守護天使は人間にバレてはいけない。そのため、何かに変身しないといけないらしい。
「守護天使ってのもいろいろと大変なんだね。」
「その言葉、配達人さんにそのまんま返すよ。」
「私にじゃなくて?」
「エル以外にもいるだろ。」
「そうでしたね。」
エルはその場を立った。
「どうしたのさ。」
「お客さん。」
ガチャ
屋上のドアが開いた。
入ってきたのは、浅草高校の制服を着た女子生徒だった。
「だ、誰よあなた!!」
一般的な反応だ。だって、ドアを開けたらおもいっきり私服で高校の屋上のベンチに座っているのだから。
「ターゲット?」
「(しゃべるなよ・・・)」
「い、今男の声がいたわよ?!」
二人は「どもりすぎじゃね?」と思った。
「空耳・・・?あなた、ここの生徒じゃないわよね?」
「神百合さんですか?」
「質問にこたえなさい!」
「(めんどっ)はい、ここの生徒じゃありません。これでいいですか?」
「・・・いいわよ。」
「宮川祐紀さんから手紙を預かっています。」
「!!あいつは死んだはずよ?!」
「これは、”幸福の手紙”」
「・・・ネットで見た事がある。配達人と名のる人が死者からの手紙を渡してくるって・・」
「その通り。私は配達人。死者からの手紙を相手に渡すのが私の仕事。」
私は、バックから封筒を取り出し、神百合の前に出した。
「し、信じられない・・・死者からの手紙なんて・・・」
「・・・」
「私は騙されない・・・」
「・・・」
「出て行って!早く出て行かないと、先生にチクるわよ!」
「・・・もし、受け取る気になったらこう言って。”ミラノ風ドリア大好き”って。」
「はぁ?!」
「んじゃ、次の機会に。」
私は、一瞬で消えた。
「・・・なんだったのよ・・・」
なんて普通の反応なんだろう・・・


「最後、めちゃくちゃ格好悪かったよ。」
「そう?」
「だって、”ミラノ風ドリア大好き”ってエルの感想じゃん。」
今は、誰かの家の屋根に座って話している。
「だって、神様は何でもいいって言ってたじゃん。」
神様というのは、10人の配達人の上に一番偉い人がいる。その人のことだ。
「なんでもよすぎでしょ。他の人たちは絶対もうちょっとマシなのにしてると思うんだけど。」
(エルは他の配達人より相当変わってるからな〜・・・)
「細かい事は気にしなーい!」
「で、実際どうするの?」
「どうするって?」
「まさか神百合が”ミラノ風ドリア大好き”って言うの待つき?」
「そのまさかですよ。」
「・・・」
「大丈夫!絶対言うから!」
「その自信はどっから・・・」
「だって、好きな人が死んで、その好きな人からの手紙。絶対言う!」
「(そうだとしても・・・あんな台詞、エルしか言わないとおもうんだけどなー
なんか、ものすごく不安になってきた・・・)」
ザドキエルがそう思っている間、エルは楽しそうに鼻歌を歌っていた。


な、なんなのよ・・・あの配達人!!
いきなり、宮川からの手紙だとか、死者からの手紙だとか!!
しかも、”ミラノ風ドリア大好き”って意味不明!!
「ゆりー」
「なにー?」
「いや、随分怒ってるなーって。」
「さっき、最悪な人に会ったの。」
「宮川くん?」
「あいつは死んだ。」
「百合って宮川くんの事好きだと思ってた・・・」
「なわけないでしょ。」
嘘・・・本当はずっと好きだった。
だから、少し、ほんの少し、配達人の言葉に惹かれた・・・
「私ね会ってみたい人がいるんだ。」
「へー誰?」
「配達人さん!」
「配達人ならいっぱいいるでしょ?」
「私が会いたいのは、”幸福な手紙”をくれる方!」
「信じてるの?」
「だって、それで幸せになれた人がいっぱいいるんだよ。」
「ふーん・・・」
結構人気なんだ・・・


三日後

「エルさーん。全然言わないよ?」
「・・・」
「あと二日ですけど。」
「んー・・・渡しに行かないとだめかなー・・・」
「最初からそうすればいいのに。」
「だって、いらないって言われて無理矢理渡すのって嫌じゃない?」
「仕事を果たせればそれでいいと思うけど。」
「・・・仕事馬鹿。しょーがない、ちょっと行ってみようか。」
私はこの前の屋上に向かった。
屋上に着くと、ちょうど神百合が一人で空を見ていた。
「神百合さん。」
「!!あんた!私はまだ言ってないわよ!」
「もう日にちが近づいてきちゃってね。」
「日にち?」
「”幸福の手紙”は、渡されてから五日間の間に渡さないと消滅しちゃうの。」
「・・・!!し、知らないわよ!だいたい、あいつから手紙なんて・・・」
「?」
「あいつ、最後に言ったの・・・好きだ、って・・・ずっと一緒にいよう、って・・・なのに、私の隣にいない・・・!!」
「バッかじゃないの。」
「えっ・・・?」
「(バカっ!!)」
「宮川祐紀が最後にそう言ったなら信じればいいじゃん。」
「あいつはもういないの!!」
「そのための手紙。”まだ、生きていたかった”と思うからこの手紙が存在する。」
「せ、説明はわかったけど・・・誰がしゃべってるの?」
「あ、」
「(はぁー・・)」
「えっ?だ、誰?!他に誰かいるの?!」
「ちょっと、落ち着いて・・・」
「か、隠れてるんなら出てきなさいよ!」
「(だめだこりゃ・・・)」
「エルー責任とってくれる?」
「ザドキエルが人間に化けりゃいいんじゃない?」
「そっか。でも、長時間は変身できないんだよねー」
「あ、あんた!い、今誰としゃべってるの?!」
「あー・・・ザドくん。どうします?」
「まぁ、今回は変身なしで。」
「なっ・・・ど、どっから!」
「こっから。」
私はスカーフを指した。
「スカーフ・・・?」
「この事は内緒ね。さっき言ったようにもうすぐ手紙は消滅しちゃうの。
受け取ってくれない?」
「ば、ばか言わないで!そんな物受け取れないわ!」
「そんな物って・・・貴方の好きな人が書いたものだよ?」
「す、好きじゃないわよ!」
神百合は真っ赤にして言う。全く説得力がない。
「・・・怖いの。」
「「はっ?」」
「手紙の事は信じる・・・けど、怖くてしょうがないの。その内容を読むのが、知ってしまうのがすごく怖い・・・!!」
「・・・行こう。」
「エル?」
「神百合さん。私はあなたが欲しいと思うまで待ちます。あと、二日ですから。」
私は、一瞬にして姿を消した。


「よかったの?」
「あういうタイプは、こうしないといけないと思ったし・・・それに、怖い理由が何となくわかったから・・・」
「そう。」
「・・・」

夜 10時頃

はぁー・・・今日も塾の授業に集中できなかった・・・
最近、学校でも塾でもあの配達人の事が頭から離れない・・・。
宮川からの手紙・・・か。
ヒタっ
後ろから足音が聞こえた。振り向くと、茶色いコートを着ていて帽子をかぶっており、気味の悪い格好をしている。見るからに怪しい格好だ。
ビクッ
不審者・・・!!
男は気味の悪い顔でニヤリと笑った。
逃げようとしたら、口を押さえられてしまった。
誰か・・・!!
助けを呼ぼうとしても、この時間。誰もいない。
『・・・もし、受け取る気になったらこう言って。”ミラノ風ドリア大好き”って。』
言ってやるわよ・・・!!
私は口を押さえられている手を無理矢理離し叫んだ。
「ミラノ風ドリア大好きーーーー!!!」
その瞬間、目の前には少女が立っている。
「すごいすごい!ちゃんと言う人エル以外にいたなんて!」
「だまらっしゃい!さーて、と・・・手紙を渡せる状況じゃないね・・・」
私は指を鳴らすと、不審者は一瞬で消えた。
「・・・」
「はい。」
私は封筒を神百合の前に出した。
神崎百合はそれを怯えながら受け取った。
「ちゃんと読んであげてね。」
「わ、わかってるわよ!!」
神百合は封筒を開けて手紙を読み始めた。

[  百合へ
まず、いきなりだけど、ごめんな。ずっと一緒にいようって言ったのに、先に死んじまって。百合とはまだ付き合って一週間もたってないのにな。もう後悔しまくりだよ。まだ百合と生きていたいってすっげぇ思う。
百合は、今、後悔しないように生きてる?辛くない?
俺は後悔をしないで欲しい。けど、それはすごく難しい。だから、俺からの頼みは一つ。ずっと笑っててほしい、幸せになってほしい。それだけ。じゃあ、また、いつか。
大好きだ、愛してる。
   祐紀より  ]

「ばかっ・・・台詞臭すぎるんだよ・・・私も、大好き・・・!」
神百合の頬には涙が流れていた。
「・・・」
帰ろうとした時だった。
「ありがとう、配達人さん。」
そう、笑顔で言われた。
その笑顔は会ったばかりだけど、一番輝いてたんじゃないかと思った。
私はその後、すぐに姿を消した。


「エル、次の配達はどこ?」
「まだわかんないよ。」
「今回も面白くなかったね。」
「配達人がそんな事言っちゃだめだと思うんだけど。」
「あー・・・エル?」
「はい?」
「鼻声なんだけど。」
「あー・・・雨が、降ってきた。」
「今日はバリバリの快晴だよ?」
「ううん。雨だよ。」
「・・・確かに雨だ。」
エルの頬に一筋の涙が流れた。
■作者からのメッセージ
初めて書いた小説です!
なので、文がめちゃくちゃだと思います。
セフェラの話は他にも作ったのですが、この作品が一番最初に作ったやつなのでこれにしました!

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