それでも君が好き
作者: 夜空   2009年05月20日(水) 16時56分37秒公開   ID:IA2jZJ8CAYY
 
 お前の為に、俺は、なにが出来るのだろう。
お前の声を、痛みを、温もりを感じるたびに思うよ。

 ―――アイシテル―――



 【 それでも君が好き 】




「幸菜(ゆきな)! 遅刻すんぞ〜?」

「ま、待ってよ彰(あきら)〜」

 そう言ってパタパタという効果音を想像させる走り方で、幸菜は俺の方に走ってきた。
その様子は、微笑ましい。俺よりも二歳年上とは、到底思えない。
 俺は、原 彰(はら あきら)。高校二年生。身長は、172pと標準サイズ。黒い髪に、いかにも最近の高校生っと言うような着かたをした制服。いたって普通の高校生だ。
そして、俺の隣でチョコチョコ歩いているのは、 高梨 幸菜(たかなし ゆきな)。身長は163pと小柄で、茶色いショートカットのの髪を耳にかけている。俺は別に好きじゃないが、普通に可愛い、自慢の幼なじみだ。大学生で、俺の高校と近い大学に通っているので、いつも一緒に登校(?)しているのだ。

「あ、彰ぁ〜待ってよぉ」

「幸菜っ! 早くしろよっ」

 俺は愛用の自転車にまたがり、幸菜を待つ。幸菜は、自転車の前で立ち止まり、俺の方を上目遣いで見る。

「……彰、後ろ乗ってもいい……?」

 おずおずと言う幸菜は、普通に可愛い。そんな幸菜は意地悪するのが楽しい。俺は意地悪そうな口調で言う。

「いいけど……あ〜でも幸菜が重すぎて倒れちゃうかも〜?」

「ひ、酷いっ! そんなに重くないもんっ!」

「あははっ。早く乗れよ」

 幸菜は「うん」っと嬉しそうに言って、俺の自転車の荷台に座る。しかっり掴ってろよっと言って自転車を飛ばした。


 家の近くの坂を下り、そのまま道を自転車で走る。だいたい5分くらいで、俺の通う高校の前に着く。
校門の前で一時停車。その時に幸菜がピョンっと自転車から降りる。登校してくる男子生徒は、ヒューヒューっと野次を飛ばしたり、幸菜を見て「可愛いなー」っとか言ってる。まぁ、それは女子も一緒で……。素直な女子は幸菜を褒め、素直じゃない女子は「そんなに可愛くなーい」とか言ってる。
俺も幸菜も、そんなの全然気にしないタイプだ。
 幸菜は、「じゃあね」っと言って大学への道を歩いていった。
っと、その瞬間誰かが俺の背中から軽くだがタックルしてきた。
「うおっ」っと言ってふらつく俺の前に出てきたのは、

「おっはよ、原くん!」

「お、小川!?」

 可愛らしく二つに結んだ黒い髪。幸菜よりも少し高い身長。ミニスカート。俺のクラスメートであり、小学校の時から同じ学校の、小川 飛鳥 (おがわ あすか)だった。
 小川は可愛らしい笑顔であははっと笑う。別に小川のことも好き……ではないが……。正直、最近ちょっと気になっている女の子だ。
小川は「遅刻になるよ〜」っと言いながら軽い足取りで走っていった。俺はその小川の後ろを追いかけるようにして走った。
 さっきまでたくさんいた生徒は、ほとんどゲタ箱に行ってしまっていて、グラウンドを歩いているのは、俺を入れて5〜6人くらいだった。





 気づいてよ。
 幸菜、見てたの。
 あなたが好きだから。
 あなたは幸菜のモノだから。
 そんな女の子じゃなくて、
 幸菜を見てくれれば良いのに。

 彰、ダーイ好キ。幸菜ノ傍ニ居テ? ズゥット……ズゥット……。







 その日も、教室に駆け込み、授業を受け、弁当食って、友達とくだらない話で盛り上がる。いつもと同じ学校生活を送った。
学校が終わり、自転車を引きながら校門の所まで来ると、幸菜が待っていてくれていた。

「お、幸菜。お待たせ〜」

「……うん。ちょっと待っちゃった」

 そう言って雪菜はニコリと笑う。「後ろ乗る?」と聞く俺に、幸菜は首を横に振った。
俺たちは歩いて帰ることにして、帰路を進む。学校から家まで、歩いていくと15分くらいかかる。が、幸菜と話しながら歩いていくのでそんなに苦ではない。

「……あのね、彰……」


 「ん?」っと返事をする。幸菜はうつむいて歩きながら話し始めた。

「……ウチのお父さんとお母さんが、仕事で時々外国に行っちゃうの、知ってるでしょ?」

「あぁ、知ってるよ?」

「また行っちゃってさ……。幸菜、今回も置いてけぼりにされちゃった……」

 それだけいって幸菜は、しゅんっとなって黙り込んだ。俺は自転車を引きながら、言葉を探す。
――にしても、幸菜は本当に子供みたいだ。
そんなコトをふっと思う。言ってみようか? そう思って口に出した。

「幸菜ももう、大学生だろ? そんな小学生みたいな事言うなよ」

 俺はケラケラと笑いながら言う。
幸菜は、そんな俺を上目遣いでジッとみつめた。その大きな瞳には涙が溢れ出している。
ギョッとして立ち止まる俺に合わせて、幸菜も立ち止まる。

「……なら……幸菜は小学生でいいよ……寂しいんだもん……。一人ぼっちは嫌なの……」

 そう言って幸菜は俺の服の裾を掴んだ。
こんな時に、俺が思ってしまったのは、幸菜って可愛いという事だった。
我ながらこんな時になに考えてんだっとは思うが、そのくらい今の幸菜は可愛かった。
 俺はちょっと躊躇しながらも、幸菜の頭に手を伸ばし、頭を撫でてやった。幸菜は何も言わずにうつむいて、静かに泣いていた。


 しばらくして、幸菜は顔を上げニコッと可愛い笑顔を見せると、何も言わずに歩き始めた。俺もその後を追う。
――幸菜は、年に似合わず本当に子供っぽいなぁっと思いながら。


 でも、その考えはすぐに壊されることになる。






■作者からのメッセージ
お久しぶりです。
一気には書けないので、アドバイスをもらって、
直しながら更新したいと思います。

アドバイス、感想、よろしくお願いします。

■一覧に戻る ■感想を見る ■削除・編集